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2/25(火)
付き合って1ヶ月という昨日は宗平が居なかったため、2人で何かをすることはできなくて、それをすごく残念そうにしていた宗平が少し気の毒で、俺は気まずい気持ちを抱えたままとりあえず宗平に一緒に帰ろうと提案してみた。
宗平は「待つって言っても校舎閉まっちまうから外でだろ?まださみーし、いいよ…。」と気遣ってくれたけど、俺は今日は少しでも長く宗平と一緒に居たかった。これが昨日の自分の行いに対する罪悪感から来るものなのではないかという気もしたが、食い下がる俺を見て宗平が嬉しそうに笑ってくれたので、俺はそんな不安からは目を背けた。
しかし…誘ったは良いけれど何をしようか…。
宗平としては何かお祝いをすると言うよりはただ出掛けたかった様子だったし…1ヶ月ごとに何か贈っていたのではお互いの負担が増えるだけだ。それにここで何か物を贈ったのでは毎月こうして何かしらを送るのが俺の中での交際のスタイルなのだと勘違いされかねない…。
「何する…?」
来賓玄関の階段に腰掛けて宗平を待ちながら無策のまま誘ったことに後悔しては悶々と考えを巡らせる。
特別なこと…特別なこと…。いや、でも考えようによっては一緒に帰るだけでも充分特別っぽい感じは出てるしなぁ。何もしなくて良いのかも?
そう長いこと頭を抱えているとポケットに入れた携帯が着信を告げた。
『ごめん!遅くなった!今部活終わったけど春人どこにいる?』
焦った口調で謝りながら伝えてきた宗平に大丈夫だと返して場所を伝えると宗平はこちらに向かうと言って電話を切った。
どうしよう。もう部活が終わったのか…。結局何するか決めてねー…。いや、いいや。もう待ってただけでも特別。そう思おう。いや、でも本当に何もしないのか?……キスくらいはする?
宗平を待ちながら先程までと同じように頭を抱えているとすぐに宗平の駆けてくる足音が聞こえてきた。
「まじごめん!寒かったろ?」
宗平は「お疲れ。」と言いかけた俺に駆け寄り頬に触れると、俺の手袋とお揃いの柄のマフラーを自身の首から外し俺の首にかけた。
「やっぱこんな遅くまで待たせるべきじゃなかったよな。すげー冷てえ。」
手際よく巻き付けた後に俺の頬を両の掌で包み込んだ宗平は申し訳なそうにそう言ってくる。
「いや…。今日は俺が宗平のこと待ってたかったから…。」
長岡とは違う…宗平の掌の感触を離したくなくて頬に当てられた手に、手袋をはめた自分の手を重ねながらそう伝えると、宗平は俺を見つめてまたニヤつきを抑えるような微妙な顔をする。
「ね…。ここでキスして良い?」
そう聞いてきた宗平を今度は俺が見つめる。
「…ダメ。ここは…。」
「…だよな。分かってる。」
宗平は少し残念そうな顔をするが、俺が校舎の脇を指さして「あっちの…人来なそうなとこなら…良い。」と言うと驚いた顔をした後にすかさず俺の手を引いた。
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