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3/25(水)

大丈夫、大丈夫、と言い聞かせていた俺の心にもどうやら限界はあったようで、俺は宗平と顔を合わせるのが辛くなってしまって、今朝、少し熱っぽいから今日は会えないと…宗平にメールを送った。 すぐに電話を返してくれた宗平が「大丈夫か?」と聞いてきて、キリキリと胸が締め付けられていく。 「ん…大丈夫…。」 『欲しいもんあれば持ってくけど?』 その言葉から部屋に見舞いに来てくれることが分かったが、それではデートを断った意味が無くなってしまう。 「来なくて大丈夫。」 『…そんな体調悪いのか?』 素っ気ない俺の返しを聞いても宗平はまだ俺を気遣ってくれて、その優しさに更に苦しい痛みが胸を襲い意図せず涙が溢れてきた。 『春人?』 心配そうに尋ねる宗平の声が聞こえる。 「っごめ…、ちょっと薬、飲もうとしたら…噎せて…。」 堪えきれずに上がってきた嗚咽を懸命に誤魔化して「本当に、大丈夫だから。」と言い残し、これ以上は話していられないと強引に電話を切った。 「ふ…うぅ…宗平…。」 通話を終えた携帯を放ってグスグスと溢れ出てくる涙を拭う。 一体…どうすれば良かったのだろう? 付き合いだして程なくして長岡に抱かれてしまったあの時に正直に言っていれば良かったのだろうか?それでもあの時の俺たちはまだ不安定で、こうして長岡が変わらずに俺を抱くという未来を前に、1ヶ月だって付き合いを続けられていたかも分からない。 それに、宗平を傷つけたくない、笑っていて欲しいとばかり願ってきたが、それは本当に宗平の為なのだろうか?単に俺が宗平から離れたくないだけではないだろうか? こんな俺を…宗平に知られたくない。 それでも宗平の隣に居たいと願い、今も宗平を縛る自分の姿はとても図々しく不遜だとも感じる。 自己嫌悪と欲望の間で、押しつぶされていく…。 だが、暫くベッドの上で体育座りのように座って同じような思考を延々繰り返していた俺の部屋の扉が、ノックと同時に開かれた。 長岡の母親にしてはあまりに乱雑なその所作にビクッと全身を跳ねさせて慌てて目を向けると…そこには宗平が立っていた…。 「なんで…。」 「やっぱ泣いてんじゃねーかよ…。」 俺の問いかけに宗平は答えないままそう呟くと少し悲しそうに眉を寄せ俺に近付いてきて、ベッドに乗り上げると体育座りの俺を挟み込むように座り、ギュウッ…と力を込めて…だが優しく抱きしめてきた。 「何があった?」 声も不安気な様子だが…それでも宗平は優しく俺の頭を撫でる。 「っ…宗平…。」 言うべきなのか?ここで? 付き合ってからも長岡に抱かれているのだと。 宗平と出掛けるはずだった1ヶ月目には長岡と2人で出掛けていたのだと。 もうずっと…ずっと長いこと宗平には明かさず、2人だけの秘密にしてきたのだ、と──。 「──っ!」 言えるわけが、無い。 「宗平ぃ…。」 好きだ。本当に。どうしようもなく。 傷つけたくない。その笑顔が見たい。離したくない。離れたくない。でもこんな俺が、隣にいることが許される筈も無い。 分かっている。分かっているのに──。 「宗平…好きだ…。」 俺はまだ、この温かさを手放せない。

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