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3/26(木) from宗平

昨日の春人は、すごく様子が変だったのに結局理由については何も語らなかった。 さりげなく服から覗く体を確認してみたが、痕らしいものはやはり何も付いていなかった…。しかし、一昨日の終業式後、俺と一緒に帰ってから昨日の朝までに何かがあったのだと考えるとあの涙の原因は裕大以外にあまり考えられない。 「おい。春人に何した。」 部活終わりに呼び止めて睨みつける俺に対し裕大は腕を組んでロッカーに寄りかかりながら「…別に。」と小さく返してきた。 「ざけんなよ!あんな、ボロボロで…!」 「可哀想だって思うなら別れてやれよ。」 「…は…?」 床に視線を落としたままの裕大がボヤくように突然に放ったその言葉に一瞬フリーズする。 「……誰が別れるかよ。俺も春人が好きだし春人だって俺を好きなままだ!」 昨日、涙の合間に零れるように俺への好意を伝えてきた春人を思い出しながら言い返すと裕大はチッと舌打ちして酷くウザったそうな顔をする。 「…それがあいつを追い込んでんじゃねぇの?」 冷めた目で裕大はそう言ってくるが、それが口から出任せなのは分かる。俺と付き合いだした当初の春人はあんなに苦しそうではなかったし、俺たちは互いに納得をして付き合い始めたはずだ。……だが…、嫌がる春人を無理矢理に説き伏せたという引け目を、感じていない訳ではない…。 「裕大が春人に何かしてんならそれをやめれば済むだけの話だろ。」 「うっぜぇなぁ。つーか元々邪魔なのはお前の方なんだよ。お前さえ居なけりゃ俺も…。」 話を逸らしながら裕大は冷めたままだった瞳に少し苛立ちの火を灯らせる。 「上手くいかねーのを俺のせいにしてんじゃねーよ。クソだせぇ。」 イラつく裕大に応えるように俺もイライラと悪意を込めて罵倒すると裕大は少し目を細めた。 「てめぇに言われねぇでも分かってるっつの。…俺もいつの間にこんなことになってんだかな…。」 裕大は最後に「ほんとだっせぇ…。」と自嘲するように笑うと、区切りを付けるように、はぁっと荒々しく息を吐いた。 「もー面倒くせぇからさ、早く別れてくんね?そしたら今度はちゃんとするし。」 「誰が別れるかってんだよ。」 口調からも原因が裕大であるのは分かるのに…いまいちハッキリと事実を認識できなくてもどかしい。 「彼氏になったのに未だに隠し事ばっかされてて悲しくなんねえの?」 「っ…!」 ずっと頭の隅にあったのに目を背けてきたその事実を突かれて……呼吸が止まった。 ギッと睨みつけると裕大は先程までとは一転して余裕有り気に笑う。 「俺からはバラさねぇ。春人とそういう話になってるからな。悪いな、笠井?」 完全に挑発されている。 それは分かっているのに…ムカムカと胸の中で燻るそれが…仄かに春人にも向かっていくのを、分かっているのに止められなかった…。

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