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「宗平…です…。」
答えた俺を見てマイマイが頷く。
「まぁとりあえずこれからすることとしては裕大くんにきちんと言葉で断ることね。宗平くんを選んだからもう裕大くんには償えない。気に入らないなら殺してくれても構わないって。」
「え、構わなくない…。」
「バカ。意思表示よ。まぁ言わなくても良いけど。とにかく償うことを諦めてもそれでも宗平くんと一緒に居たいんだって伝えるの。うじうじなくせに、あれもこれもって欲張りな性格のアンタにそんなこと言われたら『この決断は揺るがないんだ。』ってそれだけで伝わるはずだから。」
…ディスりが酷い…。
しかし、そんな言葉1つで本当に長岡は引き下がるだろうか?とても信じられないが…。
「あと宗平くんには何があってもバレないようにすること。1度秘密にしたことは最後まで死守しな。じゃないと…地獄見るよ。」
マイマイのその鬼気迫る言い方に圧倒されて「はい。」と答えはしたが…心の中は迷いでいっぱいだ。
「…でも…、俺…宗平の傍に居ても良いんですかね…?」
マイマイに答えを求めたって仕方がないが1人では抱えていられない気がして尋ねるとマイマイは「なに?居たくないの?」と視線をキツくした。
「居たい…ですけど、宗平は長岡と何も無い俺を好きでいてくれた訳で…。」
「じゃあ正直に言っちゃいたいってこと?明かされた後確かに宗平くんはアンタと付き合いを続けるか自分で選べるけどそれって結局宗平くんに責任押し付けようとしてるだけよね。アンタは楽になるかもしれないけどさ、宗平くんが可哀想じゃない?」
マイマイの言っていることも分かるのだが、それでも納得のできない俺は渋い顔のまま。
「アンタは自分の重荷を『誠実』を盾に宗平君にも背負わせようとしてるだけよ。正直なのは良いことだけど、正直だけが正義じゃないの。」
最後にピシャリと強く言い切ったマイマイに、俺はなんだか勢いに押されるように頷いてしまった。
それを見てマイマイは俺から視線を外す。
「はー…しっかし、復讐なんてのは終えた時が1番虚しいはずよ?それにいつまでも固執しちゃって、裕大くんも案外ちっぽけな人間ね。」
マイマイの発言に…やっぱりまだ長岡に対して悪い気がしてしまう俺は素直に頷けない。だがマイマイはそんな俺に気付いてか気付かずか、話を続ける。
「大体にしてこれってもう復讐の域を越えてるんじゃないかしら?まぁ復讐ってのは結局どんなことしても完全にスッキリなんてできないからどんどん過激になってくのは仕方の無いことなのかもしれないけど…。」
「もしかしたら…俺が自殺することが長岡の復讐だったのかもしれません…。」
「あら。それは1番後悔するやり方ね。」
その言葉に俺は「え?」と思って顔を上げた。
「だって復讐って要は相手を自分の生きる糧にしてるってことじゃない。殺したい相手に自分の価値を見出すなんてお笑いよぉ。」
はーぁ、と息を吐きながらマイマイはヤダヤダと言った風に首を振りながら天井を見上げた。
「それにアタシはアンタがわざわざ"こっち"に来たんだから、なるべく幸せになってほしいし協力するわ。」
マイマイはそう言って少し眉根を寄せて悲し気に微笑んだ。と思ったら表情を一転させ俺に手を伸ばしてきた。
「ていうかアンタ彼氏できたんなら教えなさいよ!アタシもこれで心置き無く裕大くんに迫れるじゃない!」
そう言いながらマイマイは俺の首にガッと腕を回してきて俺は「ぐぇっ」と間抜けな声を漏らしてしまう。
「マイマイ…まだ長岡に気があったんですか?」
先程までの口振りからして完全に冷めていると思っていたのだが…。
「当たり前じゃない!アタシより背が高くてイケメンなんて貴重なのよ!性格は矯正できるけど身長はどうにもなんないの!」
マ…マイマイ、強い…。
「まぁ裕大くんの骨はアタシが拾っといてあげるから、アンタは今まで不安にさせたお詫びも含めて宗平くんに精一杯愛情伝えなさい。」
「…はい。ありがとうございます…。マイマイ…。」
マイマイのその優しさと少し面白い言い回しに涙と一緒に笑みが零れた。
俺は…長岡とのこの曖昧な関係を終わらせてきちんと宗平だけに向き合いたい…。
「泣くな!」と言って頭をぐしゃぐしゃと撫で回してくるマイマイに笑う。
そうして意志を固くして心を新たにした。
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