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4/6(月) 2 from宗平

疑う訳ではないけれど、それでもこの間の裕大の態度により正直、気が気でない。 だから家に着いてから俺の隣に座って、クラス内での裕大の様子について「何も無かった」と答えた春人に対し、俺は笑い返すことが出来ない。 『彼氏になったのに未だに隠し事ばっかされてて悲しくなんねえの?』 あの日からずっと胸中にモヤモヤと燻る怒りに似た感情は裕大と共に…春人にも向いていた。 それには気付いていたし、流されるつもりは無いので無理矢理に蓋をして無かったことにしてきたが、何かに不安を感じる度にそれはすぐに顔を覗かせる。 「春人は…いつも『何も無い。』って言うよな…。」 思わず本心が口をついてしまって、後から慌てて顔を上げて春人を見つめる。だが春人はその言葉を受け止めるようにゆっくり視線を下げた。 「ほんと、今までごめん…。いっぱい不安にさせたと思うけど…、でも今日長岡とは本当に何も無かったから…。」 そう言いながら春人が悲しそうに微笑む。 あぁ、こんな顔をさせたい訳では決してないのに。 それでも降り積もったものが邪魔をして俺は上手く笑えない。だがそんな俺を見て春人は今度は困ったように笑う。 「何かあったら…今度はちゃんと話もするようにするし、宗平のこと頼りにしたい。」 そう言って体を寄せた春人。 つまり…今回何があったかは今後も語られることはないということか…。 見下ろすと春人は薄く目を閉じてゆく。 「……。」 ゆっくり、その唇に俺は自身の唇を重ねた。 あーあ。何もかも有耶無耶にされてくな。 聞きたい。 でも、聞けない。 春休み開始直後には大泣きをしていたかと思ったら先週は全てを解決したようにスッキリした顔をしていた春人。 その大きな変化についても俺はやはり何も教えてもらえず、ただ「宗平のこと大好きなんだって改めて思っただけ。」と嬉しいような、誤魔化されて悲しいような言葉を送られた。 自分だけが蚊帳の外にいるような疎外感を否めないまま、モヤモヤとした感情が残る。 でも… 「宗平…好き…。」 こうして甘えてくれる春人がかわいくて、次も春人の"秘密"を知った時、受け入れられるか自信が無くて……俺はまた、全ての不安に蓋をする。

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