130 / 207

3/2(月) ※

試験期間だから早く学校は終わるし、宗平も部活は無いのだけど、2学期の期末試験の成績がボロボロだったので挽回のため勉強に集中したいのだと言うと宗平も「俺もそん時は春人にフラれたばっかで成績も何も酷いもんだったから、2人で頑張んねーとな。」と笑いながら了承してくれた。 図書館で勉強しようかという案もあったのだけど、宗平があの張り詰めたような雰囲気が嫌いなのだと言うので試験期間中はお互い自宅で勉強しようということで話が纏まった。 だが──…こんなことになるのなら、無理矢理にでも宗平を図書館に引っ張って一緒に時を過ごしておけば良かったなぁ…。 「ふっ…ぅ…」 やはり今日も相変わらず涙が溢れて、俺は喘ぎなのか嗚咽なのか分からないような声を喉から漏らす。 「そんなボロボロ泣いてばっかいるくらいなら早く笠井に言って楽んなっちまえば良いだろ?」 長岡は、自分が俺を苦しめているというのにまた他人事のようなフリをして、悪魔のような提案をしてくる。しかも俺が1度目を宗平に言わなかったから、もし今更言ったとしたら泥沼は必至だと知っているくせに…。 「言ったら案外助けてくれるかもよ?」 「や、だ…言わないっ…。」 「なんで。」 本当に疑問に感じたらしい長岡はゆるゆると動かしたままだった腰の動きを止めて俺を見る。 「宗平の悲しむ顔なんて…見たくない…。」 宗平は…、こんな俺の姿を見たら怒って…そしてきっと同時にすごく悲しむ。宗平は俺のことを深く愛してくれていると、疑いようも無いほどに伝えてくれるから、その愛情を自覚している分、余計に宗平が傷付くことが分かって言えなくなる。 「…その為に自分がボロボロになってくのは良いってか?」 「…。」 答えない俺に長岡は1度「うぜぇ…。」と零すと俺の中から出ていった。 突然の行動に驚く俺に長岡は「萎えた。」と一言告げて手早く衣服を直しだす。 それに対し俺はチャンスだと思ってまたしつこくあの話題を口にした。 「なぁ、長岡。俺、何かもっと他の形で…。」 「じゃあ笠井と別れろよ。」 俺に目線を向けること無く即答してきた長岡に息を飲む。 「…つっても別れる気なんかねぇんだろ?」 「っ…。」 何度話しても…話は平行線だ。 宗平を大事にしたいからもう宗平に言えない秘密を重ねていくのは嫌なのに、宗平をフッた時に長岡を利用しようとした引け目が、より一層長岡の過去に対する償いをしなければという呵責を覚えさせる。 苦い表情の俺を見た後、長岡は「じゃあな。」と一言言って部屋から出ていった。 終わりは…いつ来るのだろう? 別れたら? 長岡が諦めたら? だがそれはどれくらい先なのか…。 抱える不安の中で、それでも宗平の笑顔が見たくて、離れたくなくて、宗平を裏切り続ける俺は祈るように手を握り合わせた。

ともだちにシェアしよう!