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3/20(金) ※

目に当てるように交差させていた腕の片方を取られて目元に軽く口付けられる感触と音がした。 「目ぇ開けろ。」 上から掛かる長岡の重圧的な声。 だが俺はそれには応えない。応えたくない。 「春人。俺を見ろ。」 もう片方の腕も取られ手は恋人のように繋がれる。同時にグリッと中を抉られ吐息と共に嬌声が漏れた。だがそれでも目を開けない俺の股間で張り詰めるモノを、長岡の指によって流れを塞き止めるようにギュウッと挟むように握られる。 「い"…ぅぅ…。」 長岡はそのまま腰を緩く揺すり、俺の感じるところを執拗に責める。 既に達しそうだったというのにそれが叶わない上に更なる刺激を与えられ、苦しさと気持ちよさが混ざっていく。 閉じた瞼に浮かぶのは宗平の笑顔…。 今月の頭から長岡は何故か3日と開けずに俺を抱き、俺は学校で宗平を見る度に締め付ける胸の痛みが強さを増していた。 長岡は涙でぐちゃぐちゃになった俺の顔を見る度に早く別れろともはや暗示のように言ってくる。それも苦しそうな顔で。 なんでお前がそんな顔してんだよ…。 1度そう尋ねた時、長岡はぼんやりと「分かんねぇ。」と一言返してきただけだった。 本人にも理由が分からないまま苛まれるなど酷い話だが、俺には何故かそれが長岡の本心から零れ出てきた言葉のように感じられた。 だが、そんなことを感じたところで何も解決には至らない。 我慢して、我慢して、我慢して、我慢して…、いつかこれでは成果が見えないのだと長岡が感じればきっと手を変えるしか無くなるだろう。そうすればまた話し合うチャンスだってきっと来る…。とにかく今は耐えるしかない。 そして明日も…、笑う宗平に合わせて俺は笑みを浮かべる。嘘に塗れた汚い笑みを。 「春人。」 だが宗平へと馳せていた思考は名前を呼ばれると同時に現実に引き戻されて下腹部に集中する。 「今お前の肚ん中に居んのが誰なのか、ちゃんと見ろ。」 「っや、だぁ…あ"っ。」 抵抗の言葉をそれでも言おうとするが、音が鳴る程強く打ち付けられた腰に押し出されたような嬌声が同時に喉から溢れた。 それでも目は固く閉じたまま。 しかし──… 「なぁ…、春人…。」 そう…耳を喰まれた後に初めて聞くような酷く心細い声音で囁かれ、その声と行動に俺は思わずビクリと肩を震わせて薄らと目を開けその姿を確認してしまった。 「やっと見た。」 一瞬だけ…寂しそうな目をしていた長岡は眉を寄せたまま笑っていて、俺がハッとしてまた目を瞑ると舌打ちを返した。 「そんなに笠井が良い?」 「ったり…まえだろ…。」 「…お前笠井にこの事言う気無ぇの?」 「…。」 答えない俺を見て長岡は、はー…と息を吐き出す。 「長岡は…なんでバラさねんだよ…。」 「別に。お前がこんなボロ雑巾みたいになっても言わねぇなら、……結果を無理に作り出すのもつまんねーなって思っただけだ。」 ……長岡は…、相変わらず長岡だった。 俺が宗平に嘘を重ねて苦しむ姿は、さぞ笑えるのだろうなぁ…。 でも…、普段の長岡は真意を尋ねる類の俺の問い掛けになんてどんな答えもくれないのに、この時だけは迷った風ではあったが答えてくれたことが妙な違和感を与えていて…、それに気が付いた俺は再び恐る恐る目を開けたのだけど、それを見て長岡は薄く笑い腰を動かし出した。 「ぁっ…やだ…。」 焦った俺は繋がれていない片手だけを動かして長岡の腕を力無く掴む。俺のモノには長岡の指が掛かったまま。俺が何をしたいかなんて分かっているはずなのに長岡は「ん?」ととぼけた顔をして緩く微笑む。 「ゃ…指、外して…っ。」 引いていた波が戻ってくるように、与えられる快楽と同時に増していく苦しさに首を振ると長岡は「俺の名前を呼べよ。」と言いながら更に奥を刺激した。 「や…だっ…んん"……。」 「呼べば外してやるから。」 ピタリと腰を寄せたまま長岡は俺の目元に口付けを降らせるが、その甘さに反するように指は痛いくらいに俺のモノを締め付けていく。 「やだ…、宗平…が、良いっ…。」 目をギュッと瞑って言うと長岡は「そうかよ。」と答えて………、 そこから先は記憶が無い。 長岡のベッドで朝を迎えた俺の喉は多少枯れていたけれど…体には相変わらず痕は1つも残されていなかった。

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