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3/22(日) from宗平

平日は俺の部活のこともあり、なかなか2人だけの時間が取れない俺らは自然と週末に会う日が増えて、週末デートが定番になりつつあった。そして今日も俺の部屋へとやってきた春人と2人、ベッドに並んで腰掛け取り留めの無い会話をして過ごす。 だが最近の春人は…、なんだか少し元気が無く見える。 俺がその変化に気付いたのはこの間のホワイトデー。でも考えてみればずっと笑顔がぎこちなかったような気もする。 ホワイトデーには俺なりにあれこれと検索し春人の喜びそうなプランを立てた。結果としてサプライズも成功した方だと思っていたのだけど…、何故か春人は途中からくすんだ笑顔を見せていた。 そしてその目は…目の前の俺ではなく、どこか遠くを見ていたようだった…。 「春人…、最近何かあった?」 「ん…?うーん、そうだなぁ…。この間のテストの結果がイマイチだった…。」 春人は、たぶん頭の回転があまり早くない部類に入る。その為突然の質問に対し嘘を吐く時はぞんざいに受け流すか、時間を要した末に焦ったように答えを捻り出すのが常。 だが今回はそうやってドギマギと焦る気力すら湧かないかのような疲れ果てた様子で自然と言葉を並べて返してきて、その態度に俺の方が焦ってしまう。 「…テストだけか?本当に?」 「はは…、何心配してんんだよ?本当だって。宗平にも協力してもらったのに…、ほんと、ごめんな…。」 後半に行くほどに声のトーンを下げて俯いた春人。その顔があまりにも苦々しく歪められていたので、思わず抱き寄せようと肩に腕を回すが、それに気付いた春人が勢いよく顔を上げこちらを見てきた。 「………何?」 「…え…。」 何と聞かれても…。 付き合っている相手を抱き寄せるのに理由など要るのだろうか…。 俺が答えられないまま呆然としていると春人はパッと視線を逸らし「飲み物、お代わりいる?」と言いながら俺の腕からスルリと抜け出し体を前に屈めてコップを手に取った。 なんだか…付き合う前、特に1度フられる前の方が俺は迷い無く突き進めていた気がする。 あの頃は春人の承諾を得ることに必死で、必ず振り返らせてみせるのだと躍起になって何事にも強気に挑めていた。 だがいざ付き合ってみると思いの外、脆く崩れそうな俺たちの関係をなんとか繋ぎ止め維持させようとそれにばかり気がいってしまう。 今だって付き合う前であれば理由を問い詰めていたかもしれないものを、それをした末に春人の心が離れてしまい、せっかく手に入れられた関係を失ってしまうことが怖くて仕方がない。 「なぁ、春人。俺のこと好き?」 「なっ…に、急に。」 「俺は春人のこと好き。」 じっと見つめると春人は体を屈めたまま膝に肘をついて視線を泳がせる。 「俺のこと好き?」 再度聞くと春人は観念したように視線を合わせた。 「…好きに決まってる。」 それを聞いた俺が微笑むと春人も恥ずかしそうに、…ぎこちなく笑った。 だが結局、この日俺らは2人だけで1日を過ごしたにも関わらず、手を繋ぐことも触れ合うことも、何もしなかった。

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