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4/27(月)
「笠井とヤッたんだ?」
学校から帰ってきたらしいところの長岡がちょうど部屋から出てきた俺に突然そんなことを言ってきた。
ここは廊下だし階下に誰がいるか分かったものではないので、俺は焦りながら長岡の手を引き自分の部屋へと引っ張り込むと扉を閉めた。
「なんで…。」
知っているんだ?まさか声が漏れてた?いや、ここはマイマイが聴診器を壁に当ててやっと声が聞こえるくらいだから防音についてはしっかりしているはずだ。
では何故知っているんだ…?
「笠井が痕付けてたのチームメイトが見つけて騒いでた。…積極的だな。」
だが聞かされた真相は案外単純なもので拍子抜けすると同時に俺は自分のしたことが恥ずかしくなって火が出そうなくらい顔が熱くなった。
「お、れだって別に…ただ好奇心っていうか…。」
意図的に付けようとしたのだと言うのがなんだか恥ずかしくて顔を赤くしたまま足元を見てモゴモゴと言っていると長岡が俺の正面に立った。
「俺にも付けてみる?」
「っは、はぁ!?」
長岡は言いながらシャツを緩めて自身の首元を晒し俺に覆い被さってくる。
襲われてる…というか襲わされてるという、普段とは逆の立ち位置のはずなのに俺はいつものように焦って惑い、手をバタバタと動かして体を離させようとする。
「冗談だよ。」
そう言って長岡は心底おかしそうに笑うと、焦って顔を引き攣らせたままの俺から体を離し、俺の顔を確認してまた笑った。
「しかしお前、今回は意識トばさなかったんだな。」
「!?なんで知って…。」
あ、バカ。なんでまた長岡に俺と宗平との詳細を教えるようなこと口走ってんだ。俺は!
だが…長岡の言ったことは当たっている…。何故そんなことが分かったのか…。まさか長岡も聴診器を…?
そう変質者を見る目で長岡を見ていると俺の視線の意味に気付くはずもない長岡はユルリと笑った。
「さぁ?俺の方がお前のこと気持ち良くさせてる自信あるからかな?」
「っ…!んなわけあるか!アホ!!」
また長岡は答えをはぐらかすのでもう話は終わったと俺は部屋を出て行こうとするが、扉に向き直った俺を長岡が腕を伸ばして胸元に抱き竦めた。
「っ離せ…!」
「まじで笠井の方が上手?それは結構ショックだわー。」
喉で笑いを堪えるように言った長岡は逃さないようにと回した腕とは反対の手で擽るように俺の耳を弄る。それに俺は身を捩らせて「だからっ…こういうのはもうしないって話だろっ!」と言いながら腕の拘束から逃れた。
「残念。早く別れてまた俺とヤろうな?」
潔く腕の拘束を解いたその態度同様、大して残念でもなさそうな長岡はまたニヤリと笑って俺を見る。
「2度とするか!」
そう言い捨てて俺は小走りで部屋を出た。
長岡に対しての償いをもうやめるのだと告げたあの日から…1ヶ月近くが経つ。
俺も長岡も以前のような苦しさに押し潰されそうな表情はしなくなった。
俺は心の重荷が外れたから当然なのだが…長岡は、なんで…。
あの日から俺は時々そんなことを考える。だが今日も答えは出ないので、俺は考えることをまたやめる。
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