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5/11(月) 2

電話の向こうで宗平が、はぁぁぁ、と大きな溜め息を吐いていた。 『もうその『ヤス』ってなんなんだよ…。裕大のまわし者?』 宗平のその言葉に俺も思わず頷いてしまう。 「きっと全部悪気は無いんだけど…。とりあえず長岡のことすげぇ信頼してんだなって感じ。」 『まー…あの外面だしなー…。』 そう言われて今日の長岡の態度を思い出して…なんとも言えない気分になった俺は膝を抱えていじいじと足の指を弄る。 「…宗平はどの競技出るんだ?」 『俺はクラス対抗リレーと仮装リレー。』 「仮装!?何やんの!?」 『まだ決めてねぇけどクラスの奴がセーラー服着ようぜとか言っててさー。すげぇ憂鬱。』 宗平のセーラー服…。想像して思わず電話口で吹き出してしまった俺に宗平は不満気な声を上げる。 『もー…。それより春人、今週の金曜誕生日じゃねぇ?どっか行きたいとこある?』 突然に話題を変えてきた宗平が次に切り出したその話に、覚えていたのかと驚くと宗平は「当然だろ。」とスッキリと言ってのけた。 「うーん…。なんだろ。パッと思い付くとこが無ぇな…。」 『じゃあ俺の方で考えとくな。』 特別何がしたいとかが浮かばなくて正直に答えると宗平がすかさずそう言ってきた。少しびっくりしたが嬉しくて「ありがとう。」と返すと宗平は電話の向こうで小さく笑った。 「宗平の誕生日は8月だよな?夏休み中だから1日使ってお祝いできるな。」 去年は互いに過ぎてから誕生日がいつなのかを知ったのでお祝いが出来なかったが、今年はきちんと祝えるのか…。しかもこうして付き合って2人で誕生日を迎えるなど…考えてもみなかった。 『な。でもとりあえず今は春人の誕生日についてな?1日ズレちまうけど出掛けんのは土曜で良いか?』 「…宗平、部活あるだろ?」 『終わってから出掛けようぜ。』 待ち望んだ休みだろうし早く休みたいだろうにすんなりとそう返してくれる宗平に嬉しくなる。が、俺としてはまだ希望したいことがあったり、する…。 「あの…、金曜…部活終わんの待ってて良いか…?宗平と…一緒に居たい…。」 そう切り出すと宗平は黙ってしまう。それに俺は途端に不安になり「ダメ…?」と問いかけてみた。 『っもー…。春人に触れない電話口でそんなかわいいこと言うなよ。殺す気?』 だが不安に反しそんなことを言われて、見えるはずもない宗平の表情が容易に想像できて恥ずかしくなったので俺は咄嗟に話を元に戻す。 「待ってて、良いか…?」 『当たり前だろ。』 宗平はそう即答してきて、俺は顔をニヤけさせる。その後も最近の部活の様子なんかを話題にあげながら電話を続けた。 あー…。電話1つでもすごく嬉しくなってしまう俺は、なんて単純なんだろう。

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