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6/2(火)

来てしまった…。 この日が…。 そう、俺にとって最も忌むべき学校行事…体育祭の開催日。 部活動に所属する生徒も多いし、何より自由に過ごせる放課後の時間を拘束されることを多くの生徒が嫌ったため、俺たちのクラスは結局練習らしい練習もできないまま当日を迎えてしまった。それでも昨日の放課後だけはヤスくんがあまりにもしょんぼりしているのを皆が不憫に思って練習をしたのだが…仕上がりとしてはこのまま本番に挑むのも悪くないくらいの出来なのではないだろうかと言った感じで、皆胸を撫で下ろしていた。 だが俺の懸念はそんなことではない…。 結局、騎馬戦の際、俺と長岡は同じグループになるということで本決定してしまったことだ。 はぁぁぁぁ、と大きな溜め息を吐いていると瑛二が朝イチで行われる大縄跳びのために俺を呼びに来た。 「どうしたの。溜め息吐いて。」 「いや…別に…。」 「騎馬戦で上にされちゃったこと?女子とは組めないし、他にも上になる人はいるんだからヤスくんの言ってたことなんて気にしなくて良いと思うよ?」 微妙にズレている瑛二のアドバイスに軽く礼を言いながらクラス毎の大縄跳びの列に並ぶ。 宗平にも瑛二にも心配されていた俺ではあるが、大縄跳びは何故かそこまで不得意ではないので難なくこなせて俺たちのクラスは学年3位の成績で終えることができた。 しかし、終わった後クラスのほとんどの奴に「やったな宮田!」「やれば出来んだな!」と声をかけられたのはどういうことなのか…。昨日の練習はまぐれだと思っていたのか?大変遺憾である。 そしてその後すぐに俺はビーチフラッグクイズ出場者の列に並んだ。 これが終わったら昼前に騎馬戦が控えているがそれまではフリー。そして午後はムカデ競走のみの出場となっている。 宗平が出る種目は全て午後なので宗平は午前中がフリーなのだが、俺の時間に合わせて一緒に過ごしてくれると言っていた。 それを思い出すだけで、ビーチフラッグクイズのスタート位置に立つ俺の杞憂も少しは晴れる。 『──フラッグには数字が書かれており、数字の小さい順に解答権を得ます。皆さんは出題後のスタートの合図でフラッグを取りに走り出してください。』 思ったより緊張していて少し足が震える…。 だが、ふと顔を上げると距離を開けて見守る観客の中…俺の正面に宗平が居て、宗平は俺と目が合うと優しげに微笑んだ。 『それでは、第1問……。』 クイズ読み上げが終わった後、合図の空砲で勢いよく体を上げ走り出す。 その背中で、あんな距離で聞こえるはずも無いというのに、宗平からの声援をハッキリと聞いたような気がした。

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