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6/21(日)

バスケの予選会トーナメントは先週で終わったらしく、宣言通りそれを勝ち抜いた宗平たちのチームは翌日から決勝リーグに挑むこととなった。その決勝リーグも今日が最終日。しかしトーナメントを勝ち抜いてきた4チームによる総当たり戦は、今までとまるでレベルが違ったらしく辛酸を嘗める結果に終わったそれに宗平は顔を歪めていた。 今日もいつものように公園で待っていた俺に、宗平は「来てもらっといて悪いんだけど今日はこのままここで別れるので良い?」と尋ねながら笑った。 「なんで…?」 「だって…なんか情けないこと言っちまいそうだし…。」 尋ね返した俺に笑いかけながらも目を逸らす宗平。 今日の決勝リーグでの1戦。決勝リーグ開始から負け越していたうちの学校を…最後の最後で出た長岡が勝利に導いたらしい。 もしも長岡が最初から出場していたら優勝も有り得たのかもしれないというその希望は…俺への非難へと変わるのだろうか。 「…俺が長岡に怪我させなかったら…ってこと?」 「そんなん思う訳無いだろ。春人のせいじゃねぇんだし。俺がもっと……って、だから、こんな暗い話聞きたくねぇだろ?俺も春人にダセェとこ見せたくねぇの。分かってよ。」 「ダサくない。」 俯く宗平の手を取ろうと指の先に触れるが、それは緩い力で払われてしまった。 「宗平…。」 「ほんとごめん。ほんと悪い。でもまじちょっと1人で居させて。一緒に居たら…思ってもねぇこと言っちまいそうだし。」 宗平は顔を上げないまま少し早口で懇願するようにそう言った。 こういう時…俺は付き合っているのに、いや、付き合っているからこそ宗平に距離を置かれてしまうんだな…。 そう考えると…少し寂しい。 こういう時ってどうやって声を掛けるのが正解なんだろう?『お疲れ様』?『また次があるよ』?マイマイは褒めてあげろと言っていたけど今回は試合を直に見れた訳ではないから試合の様子に関しては言い様がない。 「分かった…。でも…明日でも明後日でも…笑って元気出したくなったら俺んとこ来てよ。どっか遊び行こうぜ。」 そう言って…精一杯笑顔を作る。 俺が正解を模索しながら吐き出した提案に、それでも何か感じるところがあったらしい宗平は伏せていた視線をゆっくり上げる。 「明日も明後日も、俺は変わらず部活あるけど…。」 「え!?…あ、え、じゃあ…部活終わるまで待ってるし…。」 「来月期末試験あるから勉強するっつってなかった?」 「試験より宗平の方が大事に決まってんだろ。なんなんだよ!俺と出掛けたくねーの!?」 そう反発すると宗平は少し口角を上げる。 「出掛けたい。じゃあ明明後日だけど水曜出掛けよっか。付き合って5ヶ月目だし。」 「良いな。じゃあその日で。なんか考えとく。」 今日の解散の流れはやっぱり変えらんないなぁ、と思いながら、それでも少しばかり元気を取り戻してもらえたのではないかという事が嬉しくて片手を上げながら笑うと宗平は俺の上げた片手の正面で同じように手を上げて指を絡めてきた。 「いーよ、別に。ただ春人と居られりゃそれで。」 傍から見たら男同士で何をしているのだという光景なのだろう。でも今の俺の視界も、心の中も、くしゃりと泣きそうに笑う宗平の顔でいっぱいだ。 「安上がり…。」 「俺にとっては充分贅沢だからいーの。」 呟いた俺に同じように呟くようにして返した宗平。 俺たちは、どちらからともなく、また笑った。

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