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6/24(水) from宗平
日曜日に約束したように、俺の部活が終わるのを待っていた春人に、俺は変わらず「春人さえ居れば良い。」と言ったけれど、春人も春人なりに考えがあったようだ。
「ストレスが溜まったらコレだと思う!」
そう言いながらゲーセン内のちゃぶ台返しのマシンをポンッと叩いた春人に俺は一瞬呆けるが「へぇ……。」となんとか一言返した。
「あー、それよりあっちのUFOキャッチャーやらね?」
そう指差しながら春人の意識を逸らさせる。
別にちゃぶ台返しが悪いとは言わないが…いや、悪い。せっかく記念日に待ち合わせてやることがちゃぶ台返しかよ感が凄い。
「UFOキャッチャー全然取れねえんだもん。逆にストレス溜まんね?」
だが唇を尖らせながら春人が不満げにするから「じゃあどうする?」と言いながら周りを見回すと、前方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あっれー宗平!こんな時間にこんなとこで会うなんて驚きー!」
そう言って近付いてきたのはクラスの女子、上原。そしてその隣には他校の制服を着た男子が立っていた。
「おー、上原。デートか?」
問い掛けると歩み寄って来た上原は「まぁね。上原さんの美貌は他校にまで轟いてるの。」と言ってきた。それに対しぞんざいに「はいはい。美人美人。」と返すと上原は笑いながら叩くようにして俺の腕に触れてきた。
「春人。こいつクラスメイトの上原。俺らがやった仮装リレー覚えてるだろ?湯婆婆やってたのが上原で、あの仮装リレーも上原の提案なんだよ。上原が他のクラスまで連絡回したりしてくれてさ。」
そう説明すると春人は俺の腕に掛かったままの上原の手にチラリと視線を落とした後に俺を見て「そうなんだ。」と小さく返した。
その眉は、僅かに寄せられて不快感を表しているように見える。
あれ?これってもしかして…?
そう思った俺は促すように見上げてきた春人に対しとぼけたように首を傾げて返すと、また上原に向き直る。
「私、宗平の友達どっかで見たことあるな…。」
しかし突然上原がそう呟いた。
「同じ学校なんだからそりゃあるだろ。」
「いや違くてー。なんかもっと印象的なとこで…。どこだろ?」
「知らねーよ。」
まぁ学校のどこかで見かけたのを勘違いしているのだろう。
サクッとその話を流し別の話題で会話を続けていると、俺と上原の間に上原の彼氏が割って入ってきた。そして上原はそのまま彼氏に腕を引かれて多くのゲームマシンの向こう側に消えて行ってしまった。
残された俺はいつの間にかこちらを見てもくれなくなった春人に視線を戻す。
「上原の彼氏露骨だな。すげえ睨まれた。」
笑いながらそう言うと春人は更に表情を渋いものにしてジロリと俺を見た。
「…宗平。俺に何か言うことねぇの。」
怒った態度の春人に意地悪く「ん?」と言って微笑むだけで答えると春人は、はぁ…と息を吐いてまたそっぽを向いてしまった。
あー。ほんとかわいいな、春人は。
「な、帰り道、手繋ごっか。」
そう提案してみると普段なら絶対即却下なのに春人は俺の顔をチラッと見た後に「…人通り無いとこなら…。」と返した。
俺はその言葉を聞いて嬉しさから今すぐこの場で春人を抱きしめたくなってしまうが我慢する。
ここで抱きしめたらきっと本当に怒ってしまう。
でも早く手を繋ぎたくて、なんならキスもしたくて、軽くゲームをプレイした後に早々に帰路につくよう促す。
宣言通り、春人は帰り道に手を絡めてきた俺に対し、抵抗することはなくて、ただじっと俺を見つめた。その顔にキスをしたが、それも特に何も言われなかった。
…思ったより露骨に妬くんだ…。
初めて見た、春人のヤキモチを妬いている姿。
付き合って5ヶ月目の今日は春人にとってあまり良い思い出が残らなかったかもしれない。でも今日の春人は俺を笑顔にさせるのだと意気込んでいたみたいだし、許してもらおう。
「春人。かわいい。」
「……あっそ。」
俺が謝っていないから当然と言えば当然なのだが、春人の態度は相変わらず素っ気ない。しかし怒りを表現しているその態度も、俺にとっては可愛さを助長するだけだ。
そして俺は、春人が俺のことを好きなのだと言葉よりも確信できた嬉しい1日に感謝するように春人にまたキスをした。
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