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6/26(金)
「母さん。俺の部活のジャージどこ?」
1週間が終わって、明日は漸く休みだなぁなんて思いながらリビングでテレビをボーッと眺めていると、夜間のみ引かれた間仕切りの向こう側にあるキッチンから母親にそう尋ねる長岡の声が聞こえてきた。
「部屋にあるでしょー?」
「いや、無ぇんだって。」
「よく見てよ。」
「見たよ。」
「えー、ちょっと待って。これ終わったら見に行くから。」
こうして会話を聞いていると長岡も普通の高校生だ。
なんだかおかしくなって少し笑っていると間仕切りの向こうから出てきた長岡が「お前、大丈夫か?」と声をかけてきた。
「は?何が?」
「今すげぇ深刻なシーンなんじゃねぇの?笑うとこじゃねぇだろ。」
え?あ、ドラマの話か。
見てもいなかった医療ドラマの中では容態が急変した患者に医師たちが困惑しているシーンだった。
そんなシーンを見ながら笑っていた俺は確かにかなり頭のおかしい奴に見えていたかもしれない。
「何これ。実はコメディなのか?」
そう言いながら俺の横に腰を下ろしてきた長岡。
「いや、たぶん違う。さっきは別のこと考えてた。」
「ふーん。笠井のこと?」
「……違うし…。」
そんな会話をしていると後ろの方から間仕切りの扉を開けて長岡の母親が出てくる音が聞こえ、そのまま彼女は俺たちに声をかけること無く部屋を出て行った。
そしてリビングには俺と長岡の2人きりになる。
「お前笠井とケンカ中なの?」
「別に。ケンカなんかしてねぇ。」
そう。別にケンカはしていない。俺が勝手に怒っているだけで。
昨日今日と、上原さんとのことを未だに何も言ってもらえない俺は依然不機嫌なままだったが、相変わらず勘の悪い宗平は俺が何に怒っているかも分からない様子のままニコニコと俺に構ってきて、それがまた俺の機嫌をナナメにさせた。
それに…宗平は、ああいう時はきちんと女の子から離れて俺を不安にさせないように気を遣ってくれると思っていたから…結構ショックだった。
いつでも自分を1番に考えてくれる宗平を、当たり前に思っていた自分が少し恥ずかしくなったのと、それでも宗平に「悪かった」と少しでも思ってほしくて俺は態度を変えられない。
宗平のことを思い出してムスッとした顔をした俺を興味深そうに見てくる長岡の視線を感じていると、長岡の母親が部屋に戻ってきた。
「ごめん。洗濯カゴに他の子のと一緒に残ってたわ。」
「明日使うんだけど。」
「これから洗濯して干しとけばギリギリ間に合わないかしら?まぁ最悪少し湿ってても我慢してちょうだい。」
「おい。」
文句を言おうとした長岡を無視するようにパタンッ!と音を立てて長岡の母親は扉の向こうに消えて行った。
そんな長岡に俺は笑いを堪えるのに必死。
「お前…、笑ってんじゃねぇよ。」
「っはは…、だって…。」
笑うしか無いだろう。これは。
長岡はバツが悪そうにソファに座り直すと見てもいなかったドラマを見だす。
俺としてはそんな長岡が珍しくてニヤニヤとしたままだったのだが、あることを思い出して長岡に声をかけた。
「なぁ、長岡。日曜って空いてる?」
「何?デートのお誘い?」
長岡が目線をこちらに寄越すこと無く適当に答えてきたので、これは暇という事だろうなと考えた俺は小さく口を開く。
「そう。」
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