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6/2(火) 4
結局、俺たちの騎馬は俺が上から転げ落ちたことにより失格となった。転げ落ちはしたものの頭も打たなかったし、怪我もかすり傷と小さな打撲だけで済んだ。俺は。
「ほんと…ごめん…。」
仮設された保健委員のテントの中で包帯を巻かれていく長岡に謝る。
どんな風に落ちてどんな風に支えられたのか、状況があまりにも混沌としていたため誰も詳細には覚えていないが、頭から落ちそうになった俺は、咄嗟に手を伸ばした長岡に支えられたお陰で惨事を免れたらしい。しかし代わりに長岡は手首を捻ってしまったらしく、俺の体の下で潰されていた手には今、小さな傷を塞ぐための絆創膏と湿布、そしてその上から包帯が巻かれている。
「この後出るクラス対抗リレーには何の影響もねーだろうし、別に良い。」
長岡はそう言ったが、保健委員の女の子は誰かと交代できるようならしてくれと話をしていた。
「俺が代わりに…。」
「俺が非難されるからそれはやめろ。」
申し訳無さからそう提案するとそれはすぐさま切り捨てられた。
ぐぅぅ。俺がもう少し足が早ければ…。
「とりあえず昼飯の時間だし、教室戻んぞ。」
パイプ椅子から立ち上がった長岡に促されて俺も椅子から立ち上がり2人で仮設テントを出る。
「今週末もバスケの大会あるんだろ…。」
「それ確認してどうすんだよ。ドリブルも出来ねぇお前はバスケこそ代わりには立てねーぞ。」
「んなこと分かってるけど…。」
俺が心配しても特に何も変わらないというのは重々承知だが、それでも暗い気持ちで地面に視線を落としていると「春人。」と正面から名前を呼ばれた。
「悪い。来んの遅くなって…怪我した生徒が春人って伝わってくんのが遅くて…。大丈夫か?」
宗平が心配そうな声でこちらに駆け寄ってきた。
そうだ…宗平に連絡するのをすっかり忘れていた…。
しかし宗平はそんなことよりも、隣に立つ長岡の手首の包帯に気付いて表情を曇らせた。
「あの、俺は大丈夫なんだけど…長岡が…。」
長岡の手首を見ながら答えると、長岡は「こんなもん大したことねーよ。じゃあな。」と言って立ち去ってしまった。
残された俺と宗平は2人で並んでその背を見つめる。
「宗平、今週末も試合だって言ってたよな…。」
「そうだけど…、大丈夫だって。何も心配いらねーよ。」
宗平は俺を安心させるように微笑むが、俺だって長岡がバスケが上手いことは分かっているし、これが宗平たちのチームにとってかなりの痛手だということも知っている…。
「そんな気にすんなって。昼食べて元気出せ?」
落ち込む俺に宗平は困ったような顔をして笑い掛けてパシパシと背中を叩いた。
「ありがと…。」
「あ、あと午後は俺の仮装リレーもあるから楽しみにしててな。」
宗平のその言葉に顔を上げて「仮装…何すんの?」と問い掛けると、宗平は「秘密。」と口元に人差し指を当てて微笑んで返した。
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