167 / 216

6/2(火) 5

教室に戻ったらどんな責め苦を味わわされるのだろうかと思っていたが、皆の反応は俺の予想とは正反対で、俺と長岡双方を心配するものだった。 俺の左足を支えていた生徒が謝ってきたが、彼もだいぶ落ち込んでいたようで他のクラスメイトに「運動と怪我はセット!」と言われて、仕舞いには「いつまで落ち込んでんだよ。」と蹴りを入れられていた。 そんな中でヤスくんがクラス対抗リレーでの交代を長岡に申し出る。 長岡は「別に問題ねーよ。」と言っていたがヤスくんも引かなくて、結局押し切られる形で長岡はヤスくんと交代するということで決定した。 しかも長岡の手首に巻かれた包帯が余程仰々しく見えたのか、長岡はそのまま午後の部を全て見学にさせられてしまって不満そうな顔をしていた。 「ごめん…。」 「後でヤスのこと殴っとくから良い。」 なんとなく悪い気がして謝ると長岡はそう返してきて、それに思わず笑ってしまった。 午後の第1種目はムカデ競走。掛け声に合わせて足を前に出すだけだし、足を上げるタイミングさえ間違えなければ後は勝手に引っ張られていくのでこれも俺としては問題無い。そんな感じで終えたレースは学年2位。かなり良い成績だったと思う。 その後にはピンポン玉レースがあって、出場した瑛二は意外にも器用にスイスイと走り抜けていき会場内をザワつかせていた…。当然瑛二は2位と大差を付ける1位で走り終えて、クラス全員から絶賛されていた。 瑛二って前のバスケの授業でも思ったが結構運動神経が良いのかもしれない。下の兄弟のことを考えての文化部所属なのだろうが、勿体ないなぁ。 そんなことを考えていると走り終えた瑛二が戻ってきたので、一緒に残りの種目を校庭端から眺めた。 「あ、光汰。……あ、失格。」 俺が出たいと思っていた自転車遅乗りレースには光汰が出場していて『足を付いたら失格、最も遅くゴールした人が優勝』というそのルールはかなり難しかったようで、隣で見ていた瑛二に見つけられるとほぼ同時に光汰はレース上から姿を消した。 そしていくつか種目を挟んで宗平の出る仮装リレーの番が来たのだが、出場者たちが校庭に来た途端一気に場の空気が盛り上がった。 というのも、全てのクラスが何かのアニメをテーマにしたコスプレをしていて、一見するとアニメ対抗リレーのような様相を呈していたから。 ドラゴンボールにエヴァンゲリオン、セーラームーン…そして宗平のクラスは…と、視線を動かしたところで俺は固まった。 黒い布を被ってお面を付けた大きな何かが…白い甚兵衛と赤い甚兵衛を着た男女の後ろに立っている…。凄い威圧感…。そしてその大きな黒いものの隣には頭と鼻のやたらと大きい、青いドレスの女の子……。 メンバー的に黒いのが宗平だけど…宗平!カオナシかよ!!

ともだちにシェアしよう!