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7/26(日) 2 from宗平

今はこれで良い、今は気にするな、とずっと言い続けて、最近では完全に無くなったと思っていたはずの感情は、春人が再び裕大に抱かれてしまったのかもしないという疑念により俺の中で再燃する大きな炎となっていた。 違うと言って怒ってしまった春人に申し訳なくなり疑ってしまった自分が情けなくなる。 だが、言ってしまえば…今までだって多くを語ってはくれなかった春人が、今回も何かを隠しているのではないかと疑う気持ちが無い訳では無い。 はぁ…と湯気で霞む視界の中に溜め息を落とす。 夕飯を取った併設のレストラン同様、人の疎らな大浴場は先客だった初老の男性が出ていくと俺と春人2人だけの空間になった。だが俺は何も言えずに(へり)に腰掛けると足だけを湯に浸けて俯く。 そんな俺の膝元にやって来て湯の中から少し体を上げた春人が俺を見上げ問い掛けてくる。 「…なぁ、旅行終わるまでこのままなのか?」 それについては答えない。答えられない。感情の整理の仕方が、俺だって分からないのだから。 無言の俺に対しザパリと音を立て俺の足の間に膝立ちになった春人が首に腕を回して唇に吸い付いてきた。 「宗平。」 普段はこんな誰が来るとも分からない空間で春人はこんなことはしない。 「俺、宗平と一緒に朝迎えられんの…すごい楽しみにしてたのに…こんなの嫌だ。」 そうして春人は甘えたようにギュッと抱きついてきた。 「とりあえず部屋戻ろうぜ…。」 絡む腕を外して先に大浴場を出ると春人が肩を落としながらも大人しくついてくる。 部屋に戻ると春人は少し湿った髪のままこちらを見つめてただ無言で俺に抱きついた。 いつもいつも、春人は何も語らずにただ甘えてくる。 なぁ、春人。俺は春人にとってどういう存在なんだ?なんでいつも何も教えてくれないんだ?どうしたら安心できる? 手に入れたい。春人の全てを。中を、余すことなく俺で埋め尽くしたい。 「今日は…優しくできるか分かんねえよ?」 ドロドロと溢れてくる感情を前に最後の選択を相手に投げる。少しでも自分の罪悪感を減らす為に。 「大丈夫…。宗平の気持ち、俺も全部受け止めてぇし。……だから…今日は、宗平の思うように…めちゃくちゃにしてくれ…。」 そこでそんな言い方をしたのは春人自身にも俺を煽るような意図があったからなのだろう。 そしてその言葉通り、俺は春人をめちゃくちゃに抱いた。 泣いても、苦しそうにしていても、ひたすらに、思うままに。 春人はそのうちに精液も出せなくなって、体だけを震わせてイキ続けていた。 だが俺は心が満たされた気がしなくて、意識の朦朧とした様子の春人の逃げようとする腰を掴んで奥を穿った。 ──…その行動を、死ぬほど後悔したのはそのすぐ後。 春人が意識を失いそのまま眠りにつく直前のことだった。

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