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6/2(火) 7

体育祭後、クラスで打ち上げをしようということになり皆でカラオケに来ていた。 企画はもちろんヤスくん。ヤスくん。カラオケ好きだね。 宗平の方も自分のクラスで何かしらの打ち上げをやるようで宗平はそちらに参加するのだと言っていた。 体育祭でのことを話題に上げながら一緒に帰りたいと思っていたので少し寂しいが…、家に帰ってからたくさん電話をするので我慢しよう…。 会場はヤスくんを中心に大盛り上がり。ヤスくんは本当にこういう場を盛り上げるのが上手い。そんなヤスくんは時々長岡に絡んでは更に場を湧かせる。そして長岡の脇には進級当初も隣に居た子が口を大きく開けて笑いながら座っている。 「……。」 しかしその子が腕を絡める長岡の手を暫く無言で見ていた俺の視線に気付いたらしい長岡が、周りに断りを入れてから席を立つと俺に視線を寄越しクイッと顎を小さく動かして会場の外に促した。 「何?」 出てきた俺を認めた長岡は突然そんなことを聞いてきた。 いや、何って…。俺が聞きたいんだけど…。 「熱い視線送ってくれてたじゃん。ヤりてぇの?」 「ばっ…!?変なこと言うな!!」 キョロキョロと周りを見て人影が無いことを確認する俺を長岡は面白そうに見て笑う。 「……手首、痛いんじゃねぇの?」 そんな長岡を睨みながら尋ねると長岡は今度は意外そうな顔をして、それから俺の肩に腕を回す。 「よく気付いたな。そんなに俺が気になってた?」 「俺が怪我させちまったから、それだけ…って、近いんだよっ!」 ニヤニヤと意地の悪い顔をしながら耳元に唇を寄せてきた長岡は、その顔を押し返しながら言った俺の言葉を聞いて不快そうに眉を寄せる。そして、はぁっとわざとらしく息を吐いて体を起こした。 「お前はなんでもかんでも背負い込もうとし過ぎなんだよ。今回みたいに、お前が全部悪い訳じゃねぇことだっていっぱいあんだろ。」 「……。」 慰めて…くれているのだろうか?本来は慰めなければいけないのは俺の方なのに…。 長岡はきっと今週末の試合も、それを勝ち進んだとして行われる試合にも出れるか分からなくなってしまった。 黙り込んだ俺を見て長岡は再度息を吐くと「じゃあ湿布取り替えてぇからそれ買いに行くのだけ付き合え。」と言って皆の待つ部屋に戻ると財布だけを持って出てきた。 それから俺たちは2人で連れ立ってコンビニに向かった。

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