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6/28(日) 2

プロバスケットボーラーの試合観戦をしたのは生まれて初めてだったが、誰も彼もが流れるようにボールを捌くものだから俺としては最早異次元レベルに感じられて、曲芸でも見ているような気分だった。 しかし長岡はやはり経験者だからなのか感じるところがあったようで、食い入るように試合を眺めていた。 時折、選手たちのプレイについてマイマイと言葉を交わしたりもしていたし、俺ほど運動について訳が分からなくは無いマイマイとのデート先としてバスケ観戦を選んだのは正解だったようだ。 「試合観戦って初めてだったけど案外面白いね。」 「そうでした?俺は終始訳分からん感じでしたよ。」 「お前は笠井が出てるもん以外興味無ぇだけだろ。」 先程の会話から俺と宗平が付き合っていることをマイマイも知っていると踏んだんだろうが…堂々と言うのは止めてほしくてムッとしながら見ると俺の視線を無視するように長岡がマイマイに声をかける。 「舞山さん。ちょっとこの後2人で話せませんか?」 その提案に俺は目を見開く。 長岡からマイマイを誘うなんて…。 思ったより好感触だったらしいことに失礼だが俺は驚いてしまって…だがマイマイは俺以上に驚いたらしい。 大きく口と目を開けて固まった後、マイマイは「もちろん!!」と強く言い切った。 「じゃあ今日はありがとね!春人!気を付けて帰んなさい!」 そしてマイマイはパシパシと俺の肩を両手で勢い良く叩くと後ろで控える長岡の元へ走っていく。 時折長岡の方を見上げて笑いかけるマイマイの顔。 マイマイのその顔を見て、俺もなんだか宗平に会いたくなってくる。 「……。」 昨日は宗平から電話も来たけれど、やっぱりまだ腹の虫が治まらなかった俺は無視をしてしまった。 自分の会いたい時だけこうして連絡をするのは自分勝手だろうか。 『会いたい』 それでもマイマイの顔を思い出し、俺も宗平と幸せな時間を過ごしたいと思って、それだけを打ち込んだメールを送ると宗平はすぐに電話をかけてきてくれた。 『今どこ?』 「今はちょっと出先…なんだけど、…宗平は今、家?」 『あぁ。』 「じゃあ…俺がそっち行くから、待ってて…。」 とにかく早く会いたくて、遅いながらも懸命に走って宗平の家に辿り着く。 宗平は家の前で待っていてくれて、息を切らせて現れた俺に驚くと同時に笑顔を見せてくれた。 「そんな走ってくる程会いたかった?」 嬉しさが滲み出るその顔に反して出てきたからかうようなセリフに、ついつい反発したくなってしまうけど、合っているのだから仕方ない。 「ん…。会いたかった。」 俺がそう言うと宗平は片手で顔を覆い隠すようにして俯く。 「……春人。」 「?」 「さすがにここじゃキスも何も出来ねんだから、そういう拷問紛いのこと言うのやめて。」 覆う手の隙間から覗く宗平の眉は困ったように寄せられているが、口元は相変わらず嬉しそうに端が上がっている。 …聞いてきたのは宗平なのに。 「だって会いたかったの本当だし…。」 「…春人怒ってたんじゃねーの?」 「それだって…、宗平のことが好きだったからで…。」 そこまで言うと宗平は「あー。」と言いながらわしゃわしゃと自身の髪を掻き回す。 「…宗平?」 「……ごめん。知ってた。」 「へ?」 「上原に嫉妬したんだろ?知ってた。知ってて、ヤキモチ妬いてる春人がかわいくて、見てた。」 「!?」 言われた途端に俺は宗平の手の平で踊らされていたことが分かって恥ずかしくなってくる。 バシッと宗平の背を思いきり叩くと「いって!」と宗平が大きな声を上げて1歩距離を取った。 「っっっ俺!今日長岡と出掛けてたからっ!!」 本当はマイマイも居たのだが敢えて伏せてそう言うと宗平は眉間に皺を寄せて「はぁっ!?」と言いながら顔を向ける。 「何それ。どういうこと?」 険しい表情のまま俺の手を掴んで詰め寄る宗平。 先程までの少し甘い空気は微塵も無くなって冷めた視線を互いに交わす。 「言葉の通りだし。」 「付き合ってる奴いんのに他の奴と2人で出掛けるって浮気じゃねーの?」 「はー?じゃあ俺が瑛二や光汰と2人で出掛けてても宗平は浮気だと思う訳?」 「相手が裕大だから問題なんだろ。ふざけてんの?」 どんどんと冷めていく空気。 あれ…。こんなことしに来たはずじゃなかったのに…。 その後結局俺らは険悪な空気のまま別れてしまって、俺は何の為に宗平の家まで行ったんだと猛省した。 まぁでも長岡はマイマイとどうにかなるっぽいし、明日、もう心配は要らないんだと宗平にきちんと説明して謝ろう。 「…よし。」 そう思って眠りについた俺は、夜中にマイマイから受け取った「裕大くんのことは諦めようと思う。」と一言書かれたメールを翌朝読んで愕然とするのだった。

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