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6/29(月)
「お前やっぱ笠井とケンカしてんだろ。」
1限が始まる前の休み時間に文理別のクラスに移動しようと自分の教室を出た俺に、後から教室を出てきた長岡がそう声をかけてきた。
「…なんで?」
「朝、笠井に昨日お前と出掛けたのか聞かれた。」
「!余計なこと言ってないだろうな!?」
「お前から誘われたから行っただけだって伝えといた。」
それが!!余計なことだっ!!!
何言ってくれてんだお前は本当にもー!!!
もっと他にあるだろ!本当はマイマイも居たとか俺はバスケ観戦終わったら居なくなったとかさぁっ!
「ぬぁぁぁぁっ!」と叫びながら拳を作って上から下へ振るを繰り返すと長岡は「ギャグかよ。」と言って涼し気に笑う。
「つーかお前こそマイマイに何言ったんだよ!」
「は?マイ…?あぁ。舞山さん?別に大したことは話してねぇよ。」
はい嘘!絶対嘘!
大したことも話してないのにマイマイからあんな内容のメールが届く訳が無い。
「大したこと無いなら何話したか…。」
そう長岡を問い詰めようとして少し前のめりになっていた俺は「春人。」と後ろから名前を呼ばれると同時に肩を軽く引かれた。それによってよろけて、後ろに立つ人物の胸に背を預けるような形で収められる。
「近い。怒らすためにやってる?」
いやに近くからボソリと聞こえた低い不機嫌な声に驚くとすぐ横にはよく知った顔が。
「宗平!?」
あまりの近さにその顔を確認すると同時に離れようとする。が、いつの間にか肩にあったはずの宗平の手は俺を抱えるように腹回りにぐるりと回っていて、地面を蹴りこそしたものの距離はまるで開かなかった。
待って待って。ここ学校で、廊下で、今は移動のために沢山の生徒が溢れてて…。
長岡と宗平という元々目を引く2人が一緒に居るためか、多くの生徒が俺たち3人をチラリと見ながら通り過ぎて行く。
「はよ。笠井。眉間の皺すげぇぞ?」
すかさずコロッと態度を切り替えた長岡に指摘された宗平の眉間の皺は更に濃くなる。が、皺はそのままに宗平は無理矢理笑顔を作りだした。
「悪い裕大。俺は頭痛ぇし春人は俺に付き添うから俺ら保健室行くわ。1限休むって先生に伝えといて。」
そう長岡に言うと宗平は俺の了解も得ないで俺を引き摺るようにして抱えたまま歩き出してしまう。いやこれ病人の設定逆じゃね?
「えっ、…宗平っ!」
「春人。ちょっと話そっか。」
「ぇ………。」
今もまだ近い距離にある宗平の口から出てきた提案に体が固まる。
そんな俺の返事なんて元々期待していないのか、それともあったとしても参考にする気なんて無いのか宗平は迷い無く歩みを進めていく。
怖い。何言われるんだ俺…。
ううううう。
俺は本当になんで昨日あんなことを口走ってしまったんだ…!
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