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第3話
それから何度か、涼は隆寛を駅の構内で見かけた。
颯爽と歩く姿だったり、ホームで姿勢良く電車を待っている姿だったり。
(うーん、遠くから見てもやっぱりイイなあ)
そんな目で見られているとは気がつかず、たまに涼に気づくと隆寛は律儀にお辞儀をしてくれた。
どうにかまた話をしたいと思うけれどキッカケもなく日々が過ぎていく。
(飲みに誘うわけにも行かないしなあ…)
ため息をつきながら、隆寛に出会えた日はハローワークに行く足も浮足になる。
そんなある日。
隆寛の姿を見つけた涼はいつもの如く目で追っかけていたが…
(ん…?)
隆寛の歩みがいつものように颯爽としていない。
どことなく遅いし背筋も曲がっていた。
少し前かがみになっている姿に涼はまさか、また腹減ってんのか?と考えた。
初めて会ったときのように顔色は悪くないようだ。
逆に少し赤くなっているように見える。
いずれにせよ、本調子ではないようだ。
(体調が悪いだけなのか?)
気がつくと、隆寛は備え付けのベンチに座って項垂れていた。
大きく肩で息をしているのが見える。
(全く世話の焼ける…)
心配しながらも、声をかけるチャンスと思い隆寛の所へと駆け寄った。
「隆寛さん、大丈夫?」
駆け寄ってきた涼に気づくと、隆寛は顔を上げる。
やはり顔が赤い。
切れ長の目も、少しトロンとしていた。
「風邪?顔が赤いし、歩き方もおかしいようだけど」
「あ…、いや大丈夫です…」
小さな声で涼に答えた。
明らかに「大丈夫」ではないことは涼の目にも明確だ。
「用事、もう済んだ?休んだほうがいいんじゃない」
「…」
「俺んちで体を休めなよ、また倒れちまう」
(他意はあるけど、下心はないから!)
また涼は心のなかで呟いた。
隆寛は迷いながらも、熱っぽい顔を涼に向けた。
「じゃ、お言葉に甘えて…」
(よっしゃー!)
部屋に戻って、涼はとりあえず横になるようにと隆寛をベットに体を横たえた。
「すみません、一度ならず二度までも」
両手で顔を覆いながら、隆寛は謝る。
「気にするなって。今日は風邪?顔も赤いし」
目もトロンとして色っぽいよ、と言いそうになって涼は言葉を飲み込んだ。
いえ風邪ではないんです、と隆寛はそのまま答えた。
「今朝、うっかり抜いてくるの忘れちゃって。疼いちゃって仕方ないんです」
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