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第3話

*** 「ゆうまああー!」 ガイダンスが終わるとかずが駆け寄ってきた。 「お前寝坊したろ。」 「目覚まし鳴らなかったの!なんで?どういうこと??」 「お前のことだからかけ忘れたか間違ってかけたんじゃない?」 かずはおっちょこちょいでちょっとぬけてるとこがあるから有り得そうだ。 「そんな訳ない!昨日寝る前ちゃんとかけたもん!」 そう言ってかずはちゃんと目覚ましをかけたことを俺に見せようとスマホを開いた。 「え、あれ...?夜の7時半にセットしてた」 「ぶっ...、あっははは!なんだよそれ!やばいだろ!」 俺は吹き出して大爆笑してしまった。 「うわ〜、まじかよ〜 やっちゃったわ、俺」 「まあまあ、お前らしい可愛い間違いじゃないか。間に合ったんだしよかったな。」 そう言って微笑んで頭をぽんぽんとすると、かずはちょっと顔を赤らめた。 よっぽどミスが恥ずかしかったんだな。大したことじゃないのに。 「...うん、まあよかったよ。 あ!優真このあと暇??ご飯行こうよ!」 「あ、いや... ちょっとこの後は用事が...ある」 白坂と猫を見ることはなんだか自分だけの特別にしておきたい気がしてかずには言いたくなかった。 「えー、そっか〜 残念 じゃあまた明日だね!」 優馬は残念そうに口を尖らせていたが、すぐに引き下がってくれた。 「おう、また明日!後で取る授業とか相談しような」 「うん!じゃあ後で連絡する!またね!」 そう言ってかずは帰って行った。 それを見送りながら白坂の姿を探したがどこにもいなかった。いつの間にか隣の席からいなくなっていたようだ。 (え、どうしよう... あれやっぱり冗談かなんかだったのかな… イケメンにからかわれただけ...?いやでもそんなことしそうなタイプに見えなかった... それともやっぱ俺なんかに大事な猫見せたくなかった...?) 悪い方にどんどん想像が進んで1人で勝手に落ち込み席で項垂れていた。 「行こ。」 すると頭上からあの声が聞こえた。えっ、と思って顔を上げると白坂がいた。 あれ、なんで?帰ったんじゃ...と思ってびっくりして声が出なかった。 「待たせてた?トイレ行ってた。ごめん。」 淡々と、でも申し訳なさそうに謝られた。表情の変化はとても少ないが、犬だったら垂れた耳が見えるんじゃないかと思うくらいにしゅんとしていた。 「いや!ぜんぜん!俺こそ友達とちょっと話してたし、ごめん! ......やっぱり俺なんかに猫見せたくないって帰ったのかと思って、ちょっと勝手に落ち込んでた...」 白坂は俯き気味に話す俺をじーっと不思議そうに見つめた。 「なんで?約束した。それに俺がお前に見せたい。」 俺だから誘ったと、自分は特別だと言われているのかと自惚れてしまいそうになる自分が怖かった。 まだ出会ったばかりなのにすでにこの男の魅力にどんどん呑まれていっているみたいだった。この小さな感情の正体には気付かないふりをした。 「...そっか。嬉しいな!俺も見たい!見に行けるのあの後すごく楽しみにしてたんだ!」 そう言って笑いかけると白坂もとても嬉しそうに笑った。 口数も少ないし表情もほとんど変わらないのに、不思議と纏う雰囲気はとても優しくて彼と居るのは居心地がよかった。

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