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転校生 3
「はじめまして、霜月夕陽…です。少し前まで海外いたから日本の学校、初めてです。よく分からないこと沢山だから、教えて欲しいです。えー、と、よろしく!」
少しカタコトの日本語で、でも流暢に挨拶をした男の子。
ペコッと頭を下げ顔を上げると万遍の笑み。
それを見てクラスから歓迎の拍手が返される。
僕も全力で拍手した。
「席はそこ座って」
八木先生が指さしたのは僕の隣の席。
今日から増えてた席に疑問を持ってたけど納得。
入学して初めて、最後列で良かったと心の底から思った。
「まー本人も言った通り、霜月は初めて日本の学校に通う帰国子女だ。分からないことばっかだろうからみんなで面倒見てやってくれ。特に隣の席の華山!」
「は、はい!」
「頼んだぞ」
「よろしくね、」
「う、うん…!よろしく!!」
しもつき、ゆうひ…くん。
昨日たまたま会った、綺麗な目をした男の子。
今日からはクラスメイト。
仲良く…なりたいな。
そんな思いを秘めて迎えた休み時間。
現実は甘くないと突きつけられる。
「あ、あの、霜月く…ぅわっ」
「ねえねえ!帰国子女ってどこいたの??」
「ねぇねぇ、その髪も目も自前??」
「ハーフなの?」
「好きな食べ物は?」
「身長いくつ?」
「どの辺住んでるの?」
「趣味は?」
「メール持ってる???」
「お昼私達と食べない?」
授業の終わりを告げるベルが鳴った途端にクラスメイトたち…主に女子に囲まれた霜月くん。
意を決して話しかけようと思ったのに女子の勢いの良さに僕は弾き出される。
毎度の休み時間も。
昼休みも。
話しかけようとする度に素早い女子達によって阻まれる。
「ぃてて……」
「春翔、大丈夫?」
「思い切り押し飛ばされたな」
尻もちを着いた俺を引っ張り起こしてくれた奏多と暁。
「人気だねー転校生、女子のガッツが凄いや」
「だな、ちょっと怖いくらい」
隣の席なのだから簡単に喋りかけれると思っていたけどそう甘くないらしい。
一瞬にして女子に囲まれた霜月くんの姿はもう見えない。
代わりに、きゃーきゃー騒ぐ黄色い声の中から困ったような彼の声が聞こえてくる。
「あんな中喋りかけるなんてやっぱ僕には無理だよ…」
「あの引っ込み思案な春翔から喋りかけるって言葉が出るなんて…それに何度もチャレンジするなんて。珍しい」
「だって……せっかく隣だし…」
「八木ちゃんにも任されたしな。
よーし、東雲奏多様が何とかしてあげよう!」
「かなたぁ〜〜」
俺に任せろ!と立ち上がった奏多に縋る思いで抱きつく。
やっぱ奏多は凄い。
行動力もあるし、度胸もある。
僕には絶対に無理だ。
意気揚々と集団に向かっていく奏多の背に向けて
本当に大丈夫か…?と心配そうに暁が漏らす。
「だーいじょぶだって。まぁまぁ、見てろよ」
振り返ってVの字と笑顔を見せる奏多。
ちょっと僕まで不安になってくるのは何故だろう。
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