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僕らの基地
教室を出て向かう先は屋上。
いつも僕らがお昼を過ごしている場所だ。
基本的に自由に使えるよう解放されてる屋上だけど、案外使う人は居なくて貸切状態。
加えて日除けの屋根もテーブルもベンチも完備されてるから昼休みを過ごすのにはおあつらえ向きの場所なのだ。
「じゃーん!まずは俺らの基地へご招待ー!」
勢いよく扉を開け放つ奏多。
今日は天気が良くて、心地の良い風と日光が僕らを迎えてくれた。
「あ、僕らいつもここでお昼食べてるんだ」
「へ〜そうなんだ、すごくいいとこ」
一瞬眩しそうに目を細め、周囲の景色をキョロキョロ。
気に入ったみたいで笑顔を向けてくれたのが嬉しくて、
僕も自然と笑顔になる。
「だろ〜!んで、今日からはお前の基地でもあーる!」
「…???」
「あ、これ一緒に飯食おうぜって意味の奏多語だから」
「あぁ、そゆこと…」
「え、分かんない??」
「奏多の言葉は時々わかんないよ?」
「え、うそだ…まじ?」
「うん」
「ああ」
「うそぉ〜〜なんか悲しい」
「ふ、あははっ」
奏多の言葉に一瞬ぽかんとした顔をした霜月くん。
けど僕らのやり取りが面白かったみたいで笑いだした。
「あーあ、君たち面白いね…えーっ、と……」
「あっ、そういや自己紹介してないな!
俺、東雲奏多!んで、この背高いのが……」
「露騎暁」
「僕は華山春翔です。よろしくね、霜月くん」
「奏多、暁、春翔。…うん、覚えた。よろしく」
「おう、よろしくー!!」
噛み締めるように、覚え込むように、順番に呼ばれる僕らの名前。
いきなり呼ばれた下の名前に、ドキッと跳ねる心臓。
2人をチラ見したけど変わった様子なんかなくて。
僕だけ!?と内心大慌て。
奏多は早くも「夕陽って呼んでいい??」と確認を取り
それに八重歯を見せながら万遍の笑みで頷く霜月くん。
じゃあ俺も、と暁まで。
((え…うそ……そんなあっさり…))
「春翔は?」
「へっ!?」
「春翔は俺の事、名前で呼んでくんねーの?」
一人ビックリして固まってたら、下から大きな瞳に覗き込まれる。
慌てた僕の口からは素っ頓狂な返事。
恥ずかしすぎて、余計どう答えていいか分からなくなる。
きっといきなり名前で呼び合うなんて普通のことなんだろうけど、僕にはまだハードルが高すぎてタジタジ。
せっかくのチャンスだったのに、
臆病な僕は「まだ…霜月くんで……」と返してしまった。
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