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ワンライ参加作 お題「キッチンで愛を叫ぶ」朗☆奏
ワンライで書いたお話しです。
お題「キッチンで愛を叫ぶ」
前回同様 朗と奏のカプでお送りします。
*
恋人はなから何かを諦めているような人だった。
冷蔵庫の扉を開けて玉子を三つ。
茶碗の縁をこつっと鳴らすと黄身が二つ。きっとこれを見せたら
「双子だ!!」
とはしゃぐだろう。その姿を思うだけでほわりと嬉しくなるから俺は単純だ。
昨夜あんな酷い喧嘩をした癖に。
二つ目の玉子も三つ目もそれぞれ黄身は二つずつ。
「すげっ」
いよいよ見せてやりたくなってキッチンから気配を伺う。喧嘩をした次の朝は気まずくて恋人の顔を上手く見られない俺にいつも真っ先に
「ごめんな」をくれる人。
俺の大切な人。何も諦めて欲しくない人。
その為なら
「離れてもいいよ?」
本気で怒らせてしまった。
シャカシャカと解いた玉子に白いお砂糖を少し。
いつもより多めに油を引いて
ジュッと音をさせたら甘い匂いがほんのりと。
朝寝坊な恋人が匂いに誘われたなら
「ごめん」の代わりにこう言おう。
「俺たちは何も諦めなくてもいいんだよ」
キッチンの小さな奇跡は俺に勇気をくれた。
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