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帝
今から、約五年前。
帝の汚職が明らかになり、零帝、土帝以外の帝が解任されるという大事件があった。
それにより、五年前には炎帝、闇帝、光帝が。
二年前には、水帝、風帝、雷帝がそれぞれ新たに就任し、一時期話題を集めた。
また、その就任した帝等の年齢も注目された。
当時、炎帝二十歳(現在は二十五)、闇帝十五歳(現在二十)、光帝十五歳(現在二十)。
そして二年前では水帝十三歳(現在十五)、風帝十四歳(現在十六)、雷帝十五歳(現在十七)。
異例の若さに、非難の声が殺到した。
こんなに若者揃いで、実力が伴っているとは思えないと。
一、二名くらいならいいが、大人と言える年齢のものは土帝、そして年齢は不詳ながら、結構な歳だろうと噂されていた零帝だけでは、実力不足を賄うのはさすがに大変だろうというのが皆の見解だった。
それもそうだろう。
年齢と共に実力は伴っていくものだ。
子供といってもいい年齢の子等に、本来なら守られるはずの年齢の子等に、守るという責任を押し付けるのは大人としてどうなのかと、議論が繰り広げられた。
だが、それは無駄な行為だった。
彼らにはきちんと実力が伴っていた。
それは任務や依頼をこなすうちに明らかになっていき、不安や心配などの感情は信頼へと変わっていった。
だが、まだ就任してあまり時間は経っていない。
信頼していない人も多数占め、そんな中まとめ役である零帝の失踪が明らかになることは、相当な混乱を招く。
だからこそ、元々強かった結束力は今もっと強くなり、零帝失踪と共に多くなって来ている魔物討伐や零帝捜索を協力して行い、また学生はきちんと学生としての本分は全うできるようにされていた。
「リース!」
ギルドにある部屋から出たところで、声をかけて来たのは雷帝、インファス・ルーグリスト。また後ろには風帝、シオン・ミールがいた。
「入学おめでとう!」
「おめでとう」
今日は高等部の入学式。
真新しい制服に身を包むリースに、インファスとシオンは賛辞を述べる。
「こうして三人揃うのは久しぶりだな!」
就任時の時はそれぞれ高等部一年、中等部三年、二年であった為、三人が中等部で揃っていた一年間はまだ互いに交流がなかった。
その為帝として三人が同じ学校に揃うのは、実質初めてとなる。
「……何しに来たんだよ」
リースの部屋は角にあり、用がある人しかやってこない。
中等部の時もこうして迎えに来たことは一度としてなかったため、訝しげにリースは問うた。
「いや〜、お前来なさそうだったからさ。迎えに来た」
「……行くよ」
「え、お前もしかして最初から来るつもりだったのか!? そういえば、制服着てるし……マジか」
天変地異でも目撃したかのようなインファスの反応に、リースが眉をしかめた。
「義務教育だろが。行くっつーの」
「いやでも、零帝様まだ見つかってないじゃん? お前、絶対に探すっつって学校来なさそうだからさ〜。もしかして、マスターに何か言われた?」
「……別に」
「その反応、絶対に何か言われただろ。お前、相変わらず仏頂面のくせに分かりやすいのな!」
肩に手を置き、それでこそリース!、と何度も叩いて来た手を払い、リースは階段に向かって足を進めた。
「で、転移で行くの? 歩き?」
振り返り尋ねたら、二人ともリースの横に並ぶ。
「転移で。俺たちが歩いて行ったら、進まなくなりそうだからな」
「確かにな」
三人は並んで転移魔法陣から一階へ行き、隊員専用の裏口から出て行き「“転移”」と唱えた。
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