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風帝とオルガの出会い
オルガは、依頼をパーティーメンバーでこなした後、シオンを待つためギルドに備え付けてある食堂に足を伸ばしていた。
当然のようについてくるパーティーメンバーの二人。
そのうちの緑の髪の少年が、席に着きながらからかうように身を乗り出した。
「で、今どうなってんの、お前ら。少しは進展した?」
それに対し、オルガは苦い顔で返す。
「……全然」
「ま、だよな。有名人だし、相手にされなくて当然か」
「とういか、早く告白しなよ。見てるこっちがイライラする」
緑の髪の少年、グラルは両手を後頭部に回し宙を仰ぎ見、もう一人の水色の髪の少年、レントは眉間にしわを寄せ毒づいた。
「まぁ、そう言うなって。こいつ、本命には臆病なんだから」
「普段なら上手く立ち回るのにね」
「だよな」
頷きあう二人を見て、オルガは額をテーブルに打ち付ける。
「なぁ。もう俺、どうすればいい? 何か、微妙に避けられてる気がするんだけど」
「大丈夫、避けられてるのは最初からだって!」
「そうだね。むしろ最近は、前よりは警戒されなくなってるんじゃない?」
それを聞き、ますますオルガは頭を抱えた。
「最初は、風帝様から声をかけられたのに……」
「ちょうど、一年前くらいだったか? 試験会場に向かう時に声をかけられたんだっけ」
「そう。雪に凍えた猫がかわいそうで見てた時に、声をかけられたんだ」
魔法学園の入学試験。
これからの将来がその数時間にかかっているというので緊張して、宿にいても落ち着かず、随分早く出た時の事だった。
箱の中で寂しそうにこちらを見ている、一匹の子猫。
空には雪がちらつき、このままでは凍死してしまうかもしれない。
かといって実家は遠く、宿には持ち帰れない。
これから試験で誰か保護してくれそうな人を探す時間もなく、途方に暮れていたとき。
『どうしたの?』
声が聞こえ振り返ったら、そこにはこちらを覗き込んでいる、見たことのないほどの美貌を兼ね備えた人がいた。
『猫?』
しばしその美貌に見とれていたら、彼女(その時は女だと思っていた)がオルガ越しに箱の中をのぞき呟いた。
『……は、はい。俺……今から、入学試験で……』
『ああ、そっか。今日だったね。じゃあ……その猫、ちょっと預かってようか?』
『え?』
『ボクの部屋、すぐそこだから』
僅かな笑みをたたえた彼女は指で後ろを示した後、猫を抱えた。
『じゃあ、終わるくらいにまた、ここで』
そう言って去っていく彼女を呆然としたまま見送り、姿が見えなくなってしばらく経った後、ハッとなり急いで会場に向かったのだった。
「今思うと、一目惚れだったんだよな〜」
「まぁ、あんなに綺麗じゃ仕方ないよね」
「相手にゃされてないけどな」
レントが注文していたティーを片手に頷き、グラルがオルガの背を叩く。
「ま、頑張れや」
「ほら、来たみたいだよ」
レントが指で指し示す方向を見ると、確かにそこには、シオンの姿があった。
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