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会いたいよ
――君に、会いたい。
自覚した途端、その思いはどんどん強くなっていく。
「はぁ」
シオンと別れた、次の日。
休みであるこの日の朝、シオンとの会話を思い出し、僕は起きてすぐにため息をついた。
リースに零帝として会ってと言われ、今まであまり考えないようにしていたその考えが、一気に胸を満たして……苦しかった。
会いたい、その思いに支配される。
――いい……の、だろうか?
本当に、零帝として彼に会って。
落ち込まないだろうか、こんな自分を見せて。
力もなく、他の男と寝ているような自分を目にして。
彼は、肯定してくれるだろうか。
それに……。
僕は胸に刻まれた魔法陣を見て、上からそれをぎゅっと握りしめた。
「こんなものは、見せられないよね」
ちょっと会って、話して、できたら抱きしめて……それだけならいい、のかな。
この魔法陣を見せず、元気だということを伝えたら……。
「……リース」
僕だって、本当は気になっていた。
隈のある君を見て、心配だったんだ。
それが僕のせいだから、無性に悲しくなって……。
触れる距離にいるというのに、話せる所にいるというのに、零帝では無い僕には何の価値もない、意味もない。
だから会って、探すのをやめさせる。
そうしてギルドマスターへ辞表届けを出したら、全てが丸く収まる。
そしたらもう、後は……時が来るのを、待つだけだ。
「待っててね、リース」
窓の外のさえずる小鳥を見ながら、僕はそう呟いた。
「さて、そろそろ準備するかな」
ベッドから抜け出し、身支度を整えるため、洗面へと僕は向かった。
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