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突然の邂逅
「お、久しぶりじゃねぇか、アル」
そこで奥から顔を出したのは、ラリおじさん。
ノトの父親で、この店を経営している店長である。
「久しぶり、ラリおじさん。いつもの、お願いしていい?」
「おう、いいぜ」
手に持っていた荷物を降ろし、彼の手が僕の肩に触れる。
僕の中に温かなものが入ってきて、胸の辺りで何かを探るようにたむろし、やがて暫くすると周囲に霧散して消えていく。
「うーん。良くは、ねぇな。だが、予想の範囲内だ」
「そう」
「ああ。だが、確実に悪くなっていっている。気をつけろ、今のお前は、確実に“弱い”」
「わかってるよ」
そんなの、僕が一番……。
「あの時から、覚悟はできていたから」
握った拳を背後に隠し、僕はラリおじさんに微笑んだ。
それを見て何かを堪えるような表情をしたあと、「そうか」と呟く。
「とりあえず、これ。いつものだが、これはあくまで一時しのぎだ。お前の魔力はゆっくりと、奪われていく。今までのように魔力が使えない、そのことに注意しながら暮らせよ?」
「もうこうなってから、一年経つんだよ? 魔力は極力使わない、慣れたものだよ」
「っていってもお前……魔法学園に通うんだろ? 話、聞こえてたぞ。魔法使う機会が増えるんじゃ、今まで以上に注意しねぇと」
「そっか……そうだね。初級魔法以外はなるべく使わないようにするよ」
「ああ、そうしてくれ」
戸棚から取り出された袋を受け取り、直後大きな手が僕の頭を包み込んだ。
「たまには頼れよ、俺たちを。抱え込んで潰れるなんてことだけはやめてくれ。抗えよ、最後まで」
「ラリおじさん……」
優しく微笑んだ後、ラリおじさんは乱暴に僕の頭をかき回した。
「好きなやつの話でもいい。何でもいいから、時たまお前の話を聞かせてくれ」
「……え?」
「いるんだろ、好きなやつ」
ニヤリと口角を上げ、ラリおじさんはからかうように僕と視線を合わせた。
「ラリおじさんには、そんな話したこと……」
「さっきの話、聞こえてたって言っただろ?」
それを聞いた途端、僕の顔に熱が集まる。
「お、可愛い反応するじゃねぇか。そんなに好きなのか、そいつのこと」
「もう、やめてよ……」
腕で顔を隠し、赤が少しでも隠れるようにそっぽを向く。
何だか、気恥ずかしい。
ノトとだったら普通に話せるのに、ラリおじさんだと妙に恥ずかしかった。
けれどふと視線を向けた先に、話題に上がっていた人が店のドアをくぐり抜けたのが見えて、開けた口がそのままになり、間抜けな顔を晒すのも気にせず、じっと視線が彼に釘付けになる。
「おい」
聴き馴染んだ声が、店に響き渡った。
「このミルシェの花は、もうこれ以上ないのか?」
(……リース!?)
驚きが顔に広がり、店の方を向いたまま僕は固まる。
それを怪訝そうに見ながら、ラリおじさんは店の方を覗き込んだ。
そして僕と同じように一瞬固まった後、僕の方にまた視線を移し、納得したように頷いた。
「水帝様が、お前の好きな人か」
引き始めていた赤がまた押し寄せるが、僕の目は店の方から離せなかった。
学校で会える、そんなことはわかっている。
でも休日でも、一秒でも多くの時間を彼の姿を瞳に映していたい。
だからそっと、瞳を逸らさないまま、僕は奥に続く通路から彼の姿を覗き込んだ。
そこには、水色の髪を茶色に染めた、リースの姿が。
ノトに中位の解毒機能があるミルシェの花の位置を尋ね、それを取りにノトがこちらにやってくる。
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