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ファミーユ(2)

 和室で布団に寝転んだ所までは覚えていた。あれから寝落ちしまっていたとは。しかも毛布が掛けてあった。 「亮汰の目の前で寝てしまったようだな」  亮汰のまえでは格好つけていたいのに。タフな方だと思っていたが、時差と疲れには勝てなかったようだ。  結局は風呂も入らずに寝てしまった。すっきりさせようとシャワーを浴び、着替えをしてキッチンに立つ。  お世話になっている間くらいは得意分野で役に立ちたい。  フランスの朝食はシンプルだ。ムイエット(細長いパン切れ。珈琲や半熟卵などをつけて食べる)だったり、珈琲またはフルーツジュースに、パンにはジャムやバターを塗り、ヨーグルトを食べる。  亮汰も朝はシンプルなようで、棚に食パン、冷蔵庫にはバターと牛乳、そして卵がある。 「いや、料理ができないだけか」  冷蔵庫の中に食材がなさすぎる。  仕事が忙しいみたいなので買い物に行けていないからか、はたまた、唯香の所に寄り、ご飯を食べているのかもしれない。  一先ず、珈琲でもと思ったが、インスタントしかない。 「やっぱりか」  瓶を手に持ったままガックリと肩を落とす。  コンビニでも行こうかと思ったが、そのまえに亮汰が起きてきた。 「おはよう、隆也さん」  寝癖がついたままの亮汰にキュンとなる。 「亮汰ぁ、珈琲豆はないの?」 「ない」 「だよねー」  飲み物はあきらめて水を飲むとして、卵と牛乳があるのでスフレオムレツを焼くことにした。  卵白と卵黄を分けて、卵黄の方へ牛乳と塩・コショウを加え、卵白はしっかりと泡を立てる。  そこに卵黄を混ぜてフライパンに流し入れてふたを閉め、弱火で3分弱。  できあがったスフレオムレツを半分におり、皿へと乗せて亮汰の前へ置く。  パンも丁度、焼き上がった所だ。 「ふわふわだな」  スフレオムレツを眺める亮汰の声が嬉しそうだ。気に入ってもらえたならよい。 「食べて」 「あぁ。頂きます」  一口がおおきい。なんとも男らしい食べ方だ。  ウットリとそれを眺めていたら、睨むようにこちらを見る。 「視線が鬱陶しんだけど」 「あ、ごめん」  料理をはじめた切っ掛けが亮汰だから、つい、目がいってしまうのだ。 「それよりも、隆也さんも食べなよ」 「うん、そうだね」  自分はパンと牛乳で済ませる。 「後で買い物をしてくるよ。何かリクエストがあれば作るけど?」 「えぇ、肉ならなんでもいい」  せめて何肉とかまでいって欲しかったが、まぁ、なんでもいいと言われるよりはましか。 「わかった。俺が選ぶよ。まさか唯香ちゃんにも同じようなことを言っているんじゃないだろうな?」  食べたいおかずを言って貰った方が作る方としてはらくだ。 「言わないよ。唯香の奴、結婚が決まってから料理を習いだしてさ、まだレパートリーがすくねぇの。だから、向こうから何作ったとか言ってくるし」 「そうなんだ」  そんなことを聞くと、本当に結婚するんだなと思わされる。 「店はわかるか? いざって時はスマホで調べろよ」 「大丈夫。今日は実家に行くし。桜ちゃんに連れて行ってもらうよ」 「宜しく。楽しみにしているから」 「まかせておいて」  亮汰を見送った後に家のことをすませ、土産を用意して実家へと向かうためにタクシーを呼び外で待つ。  数分後にやってきたタクシーへと乗り込み実家へと向かう。その途中、車窓から見る景色は数十年で大分かわった。昔より家が建ち、店が増えた。  隆也がまだ小さかった頃は近くにスーパーが一件しかなく、買い物は中心街へ行かなければならなかった。  日曜になるとショッピングモールへと向かい、母が買い物をしている間に父がゲームセンターへ連れて行ってくれて、遊んでいたなと懐かしく思う。

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