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マランタンデュ(3)

 食事を終えてしばらくしてからお暇をする。重い気持ちも今は軽くなり、楽しいかったという余韻しかない。  しかも亮汰が結婚しないとわかり、気分が晴れ晴れとしている。手を伸ばせば届く、それが気持ちを膨らませる。  バス停まで向かう途中、亮汰に手をつかまれた。  手を掴まれた。 「なぁ、マンションに帰ってきてよ」  その言葉に、一瞬ためらう。 「俺は亮汰にあんなことをしたんだぞ?」  勝手に腹を立てて襲うような奴だ。一緒にいたくはないだろう。  それなのに亮汰は手を離してはくれなかった。 「亮汰、離して」 「隆也さんは別だから」  それはどうとらえるべきか。問うように亮汰を見つめる。 「いつでもしていいってことだよ」  恥ずかしそうにほほを染めて顔をそむけた。 「え、それって……」  もしや、亮汰も隆也と同じなのだろうか。そう思ったところに、 「お互いに恋人ができるまでだからな」  そういわれてしまう。  いわゆるセフレということか。喜びから一気に奈落の底へ。  だがここで断れば亮汰は別の誰かと抱き合うだけだろう。  それだけは嫌だ。亮汰はもう子供ではない。それに結婚しないのだからあきらめる必要はなくなった。  兄ではなく一人の男として見てもらえるようになりたい。 「また、してもいいってことか」 「隆也さんならいいよ」  身体だけじゃない。心も必ず手に入れる。 「マンションに帰るよ」  その言葉に亮汰がホッと息を吐く。 「その前にホテルで清算してくるよ。マンションで待っていて」 「あぁ。早く戻ってこい」  帰る場所はここ。そういっているかのように亮汰は自分の胸を拳を作り叩いた。  またここに帰ってこれた。ドアの前に立ち、実感する。  このドアを開ければ亮汰がいる。それがうれしくて口元が緩む。  ドアホンを押すと鍵を開ける音が聞こえてドアがゆっくりと開いた。 「おかえりなさい、隆也さん」  スウェットの上下をきた亮汰が出迎えてくれて、リビングへと向かう途中、後ろから抱きしめた。 「隆也さん」 「たった一日離れていただけなのにな。ここに帰るとすごく安心する」 「そうだろう?」  にやりと笑い、拳で胸を軽くたたかれた。 「隆也さんが出て行ってから、どうやったら俺のところに帰ってくるかなってずっと考えてた」  甘えるように上目使いで見つめられ、胸が高鳴った。  これだけで帰ってくる価値がある。 「亮汰」  肩に手を置くと亮汰の身体がかすかに揺れる。  もしかしてと亮汰を見れば、ほほが赤く染まっていた。  隆也を意識している。それに気が付いてしまったら自分を止められなかった。  唇を重ね、舌をいれる。中で動かせば、それに応えるように絡みあい、気持ちが高ぶり下半身がじくじくとしはじめたとき。 「はぁっ、隆也さん、まって」  手を身体の間に差し込み止められてしまう。  なぜ止めるんだと亮汰を見れば、顔をそらされた。 「まずはお風呂。触りあうのはその後な」 「それなら一緒に入ろうか」 「俺はもう入ったから」  もしやこうなることを望んでいたのだろうか。  隆也が何を考えているのかに気が付いたか、顔に掌を押し当てた。 「早くはいらないと、寝ちゃうからな」 「わかった。亮汰、起きて待っていてね」  かるく唇にキスをすると、恥ずかしそうに手の甲で唇を隠し、さっさと行けと背中を押される。  今、どんな気持ちで隆也を待っているのだろう。それを想像するだけで顔は緩んでしまう。 「だめだ。だらしない顔は」  両頬を叩いて気を引き締める。  だが、浮かれてしまうのはしょうがない。亮汰があまりに可愛いものだから。  

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