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「かっ」
そう思っていたのに、彼からは次々と予測出来ない反応が飛び出る。
「かっこいい!」
そう目をキラキラさせたかと思うと、払ったはずの手を再び握られ、彼の胸の前にて両手に包まれた。
「もしよければ、オレの事、弟子にしてください! お、オレ、まだヤンキー見習いなので!!」
ズイっと迫られ、思わず忍は彼から一歩退いた。
大体、弟子って何だろうか。ヤンキー見習いとは、ヤンキーに見習いもクソもないはずだが。
それに怒鳴ったはずなのに何でキラキラとした目で見られてるんだ? 普通逆の反応をするだろう、こいつはさっき遅刻くらいでビビってたくせに、俺は怖くないってのか?
と、心の中で呟きながら、あまりの話の通じなさに途方に暮れる。
強く拒絶しても『かっこいい』と言われ、無視しても付きまとわれる。
一体、どうしろってんだ。
「断る」
「何で!?」
「弟子なんて阿保か、時代に合ってねえんだよ」
「あ、そっか、じゃあ……先輩?」
「同い年だろうが」
「ヤンキーさんの先輩!」
「やめろ」
「……先輩と師匠、どっちが良いですか?」
「普通に流川でいいだろうが、んな恥ずかしい呼び名しなくたって……あ」
彼のあまりのしつこさに呆れ、適当に応酬していたのがいけなかった。
気が付いたらそう口にしていて、撤回しようと口を開くも、彼の満面の笑みから発された言葉により遮られた。
「わかりました、忍くん!」
「……馴れ馴れしいんだよ、クソが」
「あ、その言い方良いです! もう一回お願いします!」
「帰る!」
「えっ、待って!」
忍が背中を向けたら、鞄を持ち直した蓮も慌てて付いて来て、隣に並んだ。
もう追い払うのも面倒で、隣に並ぶ彼に忍は何も言わなかった。
周りも彼が常に笑顔なせいで、ただのじゃれ合いだと思ったのかいつの間にやら数人残っている生徒の誰からも見られていなくて、あの鬱陶しく常に付きまとっていた中学時代の視線との違いに戸惑った。
高校なんて場所や勉強内容が変わるだけだと思っていたが、存外いろいろなものが変わるかもしれない、なんて。
「し、忍くん、速いです。もっと、ゆっくり……」
「一緒に帰るなんて言ってねえんだよ」
「そんな!」
そんな予感を感じさせているのが彼だなんて認められず、ぞんざいに忍はそう言い放つ。
けれども彼は一瞬驚いた顔をした後、「へへっ」と不思議な笑みを漏らした。
「じゃあ、勝手に付いて行きます!」
同じだろうが、という言葉を飲み込み、ならばと付いてこれないスピードで早歩きしだした忍に、息を切らせながら彼は別れ道まで付いてきた。
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