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2- 本当に欲しいのは?(3)SIDE:神崎
さかのぼること数時間。
「んにゃぁーーーー!」
どうも、神崎零です。あ、ゼロでもいいよ。
ともかく俺は、朝から一人で頭を抱えて悶えていた。
昨日の夜寝るまでは何ともなかったのだけれど、朝目覚めて、ふと槙野さんにふられたことを思い出してしまうと、何とも言えない切ない気持ちになってしまう。
かれこれ一時間、ベッドから出ずにごろごろとしている。
ちょっと聞いてー。そもそもそれはもう鮮烈な一目惚れだったんよー。
異動の挨拶に行った時、槙野さんの、大理石の彫像を思わせる凛として白く美しい横顔に惚れた。
それにあの暖かな茶色の瞳!
あの目でにこりと微笑まれて、頭を撫でられた時のことを思い出すと胸が苦しくなる。
その後肩を引き寄せられて、髪を梳かれた。いや、俺視点では愛撫されたといっても過言ではない。
額に触れた細く繊細な指先が……。
「くう、駄目だこれ。駄目なやつだ」
あんなにはっきりふられたというのに、まったくもって諦められない。
約一日見続けた槙野さんの姿が瞼に焼き付いて離れない。
「俺悪くないもん!ま、槙野さんが……ぅぁぁぁぁああ」
名前を口にするだけで顔が熱くなるのを感じる。
枕代わりのクッションに顔を埋めてじたばたする。
20を超えた男のすることじゃないが、体が勝手に動くのだから仕方ない。
「なんであのタイミングで告っちゃったかなぁ、俺。早すぎるだろ」
二人きりの空間で手が触れて、鉄が磁石に引き寄せられるように、自然と俺は槙野さんの華奢な手を握っていた。
そうなったら言うことは一つしかなかった。
「だからまだ言っちゃ駄目なんだって、俺ってばもう、せっかちさんなんだから」
もうちょっと仲良くなって、俺のことを知ってもらってからなら、まだチャンスはあったかもしれないのに。
「でも断り方も大人だったなぁ……」
俺の手の甲を優しくぽんぽんと叩いてくれたあの感触が忘れられない。
もしかしてまだ、と思ってしまう。
こんな調子で、今後槙野さんと一緒に何事もなかったかのように仕事をできるだろうか。
俺には全く自信がない。
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