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2- 本当に欲しいのは?(9)SIDE:神崎

俺は今かなり幸せだった。 好きな人の肩に身を預けて、うつらうつらしている。 さっきはどさくさに紛れて抱きついてみたけれど、それほど嫌がられなかった。 腕の中にあった華奢で繊細な体。求めてやまない人。 それが今はすぐ隣にいる。 これは夢なのかな? うん、たぶん夢だ。 だって目を閉じるとふわふわしてこんなに暖かい。 飲みすぎ?酔っ払い? まあいいじゃない。それでも。 こうして槙野さんに甘えられるのだから。 気を抜くと本当に眠り込みそうになるのを、やっとのことでうつつにしがみついている。 今眠ってしまうなんてもったいない。 槙野さんの傍に居られるこの時を、最大限に堪能しないと……。 ……。 …………。 「神崎。10分経ったぞ。起きろ」 は!?寝てた?寝ちゃった?やってしまった。 重い瞼をしばたたきながら開けると、大好きな人が心配そうに覗き込んでいるのがまず目に入った。 槙野さんがずっと傍に居てくれた。 それが幸せすぎて、思わずにこりと大きく無防備な笑顔を浮かべた。 とたんに槙野さんがほっとしたような、しかし苦しそうな複雑な表情になった。 「槙野さん?」 「あまり、頭を撫でてやりたくなるような顔をするな」 「え?」 寝ぼけ頭では理解が追い付かず、思わず俺は聞き返した。 怒られた。 「だから!そういう可愛い顔で笑うなっつってんだよ!いつもみたいに、にっ、って笑えよ!」 心なしか槙野さんの白い頬がほんのり赤くなっている。 なに今俺のこと、可愛いって言った? これは、もしかして? 酔いが一気に醒めていく。 「槙野さん、もしかして」 「知らん。帰るぞ」 槙野さんは二人分のバッグを持つとそっけなく立ち上がる。 「え、待って待って槙野さん」 慌てて俺も立ち上がる。 「もう歩けるな?大丈夫だな?」 ちょっとだけ振り返って念を押した槙野さんは、さっさと駅の方へ歩いていく。 え!やだ!もっと槙野さんに甘えたい! あわよくば槙野さんにもう一回抱きつきたい!せめて手を繋ぎたい! これで終わりなんて! やだ!待ってよ槙野さん! そんな顔されて、黙ってられるアタシじゃないのよ! あ、ちょっと興奮してオネエ入っちゃった。 とにかく! 脈ありっぽくない?敗者復活ありじゃない? 頑張っちゃうわよアタシ! ねえ、ちょっと待ってよ槙野さん!

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