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4- しつけは飼い主の責任です(3)
大人しくソファに座った神崎は、興味深そうに部屋の中をきょろきょろしている。
「散らかってるって言ったろ?」
「散らかってるっていうか……鈴ちゃんの部屋ですね、ここ」
「まあな」
リビングに入って左手にカウンターキッチンがあり、その向かいの壁にはキャットタワーが設えてある。鈴は後ろ左足が悪く少し引きずっているのだが、高いところに上るのは大好きなので、キャットタワーも俺の身長より高いのを置いている。
床には鈴のベッドやおもちゃが置いてあり、うかつに歩くと何かしらを蹴とばすことになる。
「鈴ちゃんいいなー。愛されてるなー」
神崎は羨ましそうに膝の上の鈴の喉をくすぐる。
鈴は気持ちよさそうにごろごろと喉を鳴らした。
「あ、ありがとうございます」
紅茶がはいったので、ティーセットをセンターテーブルに置く。
ついでに少し離れて神崎の横に腰を下ろした。
「……」
恨めしそうに神崎が俺を見る。
「普通だろ、多少距離を置くのは」
「俺は槙野さんとラブラブしたかったのに」
「馬鹿か」
「俺は槙野さんに関しては馬鹿なんですー。鈴ちゃんはこんなに仲良くしてくれるのに」
なー、と鈴の顔をぐにぐにマッサージする。
鈴はすっかり神崎に懐いたようだ。俺としては複雑な心境だが。
紅茶を飲みながら、ふと神崎は右手に目をやった。
「こっちは何の部屋なんですか?」
「ん……本が置いてある」
「へー。開けていいですか?」
「好きにしろ。ただし崩すなよ」
崩すってなんですかー、と笑いながら神崎はスライドドアで区切られた部屋を開けた。
「うわっ、本屋だ」
リビングに隣り合ったその部屋には、今まで買いためた本を置いている。
スライドドアで区切られているので、ドアぎりぎりまで本棚が来ている。それが3列だ。
隣の本棚を見たかったら、別のドアを開けなければ行き来できない仕様だ。
「えー、しかも奥の方、本棚に入りきってないじゃないですか」
神崎の言う通り、右奥にいたっては、本棚に入らなくなった本を床に積み上げている。
何とかしなければならないとは思っているが、思っている間にも本が増えていくので、半ば諦めている。
電子書籍はどうも馴染めなくて、ついつい紙の本を買ってしまうので、際限がない。
「ふーん……面白そうなのありますねぇ……」
本棚を眺めながら神崎が呟いている。
「興味があるなら持っていっていいぞ」
「いや、ここで読みます」
「どれだけうちに入り浸るつもりだよ」
「えへ。いっぱい」
神崎がにこりと笑いながら戻ってくる。
「だって槙野さんち居心地いいんだもん」
もとの位置に座ったかと思うと、こてんと倒れて俺の膝に頭をのせた。
にこにこ笑顔のままで、大きい瞳で俺を見上げて、
「頭撫でて?」
そんな可愛いことを言うから、髪がくしゃくしゃになるまで撫でてやった。
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