20 / 128

4- しつけは飼い主の責任です(3)

大人しくソファに座った神崎は、興味深そうに部屋の中をきょろきょろしている。 「散らかってるって言ったろ?」 「散らかってるっていうか……鈴ちゃんの部屋ですね、ここ」 「まあな」 リビングに入って左手にカウンターキッチンがあり、その向かいの壁にはキャットタワーが設えてある。鈴は後ろ左足が悪く少し引きずっているのだが、高いところに上るのは大好きなので、キャットタワーも俺の身長より高いのを置いている。 床には鈴のベッドやおもちゃが置いてあり、うかつに歩くと何かしらを蹴とばすことになる。 「鈴ちゃんいいなー。愛されてるなー」 神崎は羨ましそうに膝の上の鈴の喉をくすぐる。 鈴は気持ちよさそうにごろごろと喉を鳴らした。 「あ、ありがとうございます」 紅茶がはいったので、ティーセットをセンターテーブルに置く。 ついでに少し離れて神崎の横に腰を下ろした。 「……」 恨めしそうに神崎が俺を見る。 「普通だろ、多少距離を置くのは」 「俺は槙野さんとラブラブしたかったのに」 「馬鹿か」 「俺は槙野さんに関しては馬鹿なんですー。鈴ちゃんはこんなに仲良くしてくれるのに」 なー、と鈴の顔をぐにぐにマッサージする。 鈴はすっかり神崎に懐いたようだ。俺としては複雑な心境だが。 紅茶を飲みながら、ふと神崎は右手に目をやった。 「こっちは何の部屋なんですか?」 「ん……本が置いてある」 「へー。開けていいですか?」 「好きにしろ。ただし崩すなよ」 崩すってなんですかー、と笑いながら神崎はスライドドアで区切られた部屋を開けた。 「うわっ、本屋だ」 リビングに隣り合ったその部屋には、今まで買いためた本を置いている。 スライドドアで区切られているので、ドアぎりぎりまで本棚が来ている。それが3列だ。 隣の本棚を見たかったら、別のドアを開けなければ行き来できない仕様だ。 「えー、しかも奥の方、本棚に入りきってないじゃないですか」 神崎の言う通り、右奥にいたっては、本棚に入らなくなった本を床に積み上げている。 何とかしなければならないとは思っているが、思っている間にも本が増えていくので、半ば諦めている。 電子書籍はどうも馴染めなくて、ついつい紙の本を買ってしまうので、際限がない。 「ふーん……面白そうなのありますねぇ……」 本棚を眺めながら神崎が呟いている。 「興味があるなら持っていっていいぞ」 「いや、ここで読みます」 「どれだけうちに入り浸るつもりだよ」 「えへ。いっぱい」 神崎がにこりと笑いながら戻ってくる。 「だって槙野さんち居心地いいんだもん」 もとの位置に座ったかと思うと、こてんと倒れて俺の膝に頭をのせた。 にこにこ笑顔のままで、大きい瞳で俺を見上げて、 「頭撫でて?」 そんな可愛いことを言うから、髪がくしゃくしゃになるまで撫でてやった。

ともだちにシェアしよう!