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4- しつけは飼い主の責任です(6)SIDE:神崎
二人で後片付けをして、なんとなくソファに戻る。
それとなく槙野さんとの距離を詰めてみるけれど、片手を突っ張るようにして拒否された……。
何でだ。胃袋から懐柔作戦失敗か?
いや、いいんだ、作戦強行だ。
「槙野さーん」
「ん?」
ほら。返事が最初の「あ?」から「ん?」になってだいぶ優しくなってる。
大丈夫、行ける。
「もう今夜遅くなっちゃったんで、泊めてください!」
勢いで抱きついちゃおうか迷ったけど、それではねのけられたらもとも子もないから、我慢してその場で手をついて頭を下げる。
……返事がない。
え、やだやだ怖い。そーっと顔をあげてみる。
腕組みした槙野さんが茶色い瞳の目を細めて俺を見下ろしてる。
うん。すげーかっこいい。
しばらくそのまま見つめてると、っていうか見惚れてると、槙野さんは目を閉じてため息をついた。
「遅くなったからじゃないだろう……」
「え?」
「もともと泊まる気だったんだろ?」
おい、俺の下心!なんでばれた。
作戦は完璧だったはず。
「さっきバッグからエプロン出してるとき、ちらっと着替えが見えたんだよ。詰めが甘いぞ」
あー。エプロンうっかりバッグの底に入れちゃったから、もたもたしてたんだよね。えへ。詰めが甘いとは上手いこと言いますなー旦那。なんて。
槙野さんはもう一度ため息をついた。
「別に、寝るのがソファで良ければ泊まってもいい」
「良いです良いですお願いします」
俺は即頷いた。
槙野さん優しーい!
やった!槙野さんちにお泊まり!
「はっ!……まさかの添い寝あり?ありですか槙野さん!」
「なんでだよ。俺は寝室で寝るから心配するな」
うぅ……さりげないお誘いだったのに。冷たい。
「とりあえず風呂沸かすからな。もういい時間だ」
なんだかんだで一番風呂をいただいてしまった。
洗い場も浴槽もめっちゃ広い。
俺んちなんて、体育座りしないと浴槽入れないのに、ここ、足が伸ばせる!
……気持ちいー……。
これは二人だって入れるんじゃない?
槙野さん小柄だし。俺がちょっとつめれば……。
……。
…………。
いや、落ち着け息子よ。
添い寝も拒否されてるのに、一緒にお風呂は夢のまた夢。
いや、夢っていうか絶対に絶対に無理。
なあ。分かれよ。俺。
俺は自分の醜い体を見下ろして、溜め息をついた。
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