36 / 128

5- 公園デビュー!(10)

魅惑のネコゾーンを抜けた後は普通のスピードで動物を見て回った。 はるか頭上で餌を食むキリンを、ぽかんと半口開けて見上げる神崎の横顔に、俺が必死で笑いをこらえたり。 象が突然目の前でトイレタイムに入ってしまい、その量に思わず神崎と二人で目を丸くして顔を見合わせたり。 最後にカピバラを見に行くと、ちょうど温泉に浸かっているところだった。 「ぎゃー!ほんとに温泉入ってる!可愛い!槙野さん!可愛い!」 「落ち着け。大きな声出したらカピバラが驚くだろ」 「うぐぅ」 神崎が両手で口を押えて呻く。……そこまでしないと叫びそうなのか。 「はは、あのカピバラ神崎に似てないか?ほら、一番小さいくせにちゃっかり一番温かそうなとこにいる。ちゃっかりしてるとこがそっくりだ」 「気持ちよさそうにしてますねー。いいなあ」 神崎は俺が似ているといったカピバラを写真に撮ると、早速携帯の壁紙に設定していた。 一通り動物園は回れたので、弁当を持って公園に行く。 陽が程よく当たる場所を見つけ、シートを敷いた。 「こちら、シェフ神崎のスペシャルランチでーす!」 「今日も美味そうだな」 1.2人前くらいのおかずと、ラップでくるんだおにぎり。 おにぎりは、俺用にわざわざ小ぶりのものが作ってある。 「おにぎりは、唐揚げですよー」 「おにぎりに唐揚げ入れたのか」 「おかずがいっぱいになっちゃったんで、おにぎりの具にしてみました」 いただきますと手を合わせて食べ始める。 外で食べる弁当は格別だ。 動物園で歩き回って腹も減っていたこともあり、あっという間に食べ終わってしまった。 腹がくちくなると眠くなる。 「おい、神崎」 「はい?」 「足伸ばせ」 足を抱えて座っていた神崎に脚を伸ばさせると、俺は太ももを枕がわりに横になった。 「はわっ?!」 なぜか神崎が奇声を上げた。 「俺は寝るから、20分経つか、脚がきつくなったら起こせ」 「は、は、はいっ!」 いつになく神崎が動揺している。 見上げると、また両手で口を押さえて真っ赤な顔をしていた。 俺は思わずふっと笑って、その手の片方を掴んで剥がしてみた。 手が温かくて、そのまま俺はゆっくりと眠りに落ちていった。

ともだちにシェアしよう!