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5- 公園デビュー!(10)
魅惑のネコゾーンを抜けた後は普通のスピードで動物を見て回った。
はるか頭上で餌を食むキリンを、ぽかんと半口開けて見上げる神崎の横顔に、俺が必死で笑いをこらえたり。
象が突然目の前でトイレタイムに入ってしまい、その量に思わず神崎と二人で目を丸くして顔を見合わせたり。
最後にカピバラを見に行くと、ちょうど温泉に浸かっているところだった。
「ぎゃー!ほんとに温泉入ってる!可愛い!槙野さん!可愛い!」
「落ち着け。大きな声出したらカピバラが驚くだろ」
「うぐぅ」
神崎が両手で口を押えて呻く。……そこまでしないと叫びそうなのか。
「はは、あのカピバラ神崎に似てないか?ほら、一番小さいくせにちゃっかり一番温かそうなとこにいる。ちゃっかりしてるとこがそっくりだ」
「気持ちよさそうにしてますねー。いいなあ」
神崎は俺が似ているといったカピバラを写真に撮ると、早速携帯の壁紙に設定していた。
一通り動物園は回れたので、弁当を持って公園に行く。
陽が程よく当たる場所を見つけ、シートを敷いた。
「こちら、シェフ神崎のスペシャルランチでーす!」
「今日も美味そうだな」
1.2人前くらいのおかずと、ラップでくるんだおにぎり。
おにぎりは、俺用にわざわざ小ぶりのものが作ってある。
「おにぎりは、唐揚げですよー」
「おにぎりに唐揚げ入れたのか」
「おかずがいっぱいになっちゃったんで、おにぎりの具にしてみました」
いただきますと手を合わせて食べ始める。
外で食べる弁当は格別だ。
動物園で歩き回って腹も減っていたこともあり、あっという間に食べ終わってしまった。
腹がくちくなると眠くなる。
「おい、神崎」
「はい?」
「足伸ばせ」
足を抱えて座っていた神崎に脚を伸ばさせると、俺は太ももを枕がわりに横になった。
「はわっ?!」
なぜか神崎が奇声を上げた。
「俺は寝るから、20分経つか、脚がきつくなったら起こせ」
「は、は、はいっ!」
いつになく神崎が動揺している。
見上げると、また両手で口を押さえて真っ赤な顔をしていた。
俺は思わずふっと笑って、その手の片方を掴んで剥がしてみた。
手が温かくて、そのまま俺はゆっくりと眠りに落ちていった。
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