37 / 128
5- 公園デビュー!(11)
……意識の外で、神崎がぶつぶつ言っている。うるさい。
「うぅ……これじゃ生殺しだよ槙野さん。酷いよー。手だけ握って寝ちゃうなんて……いっそ俺を抱き枕にしてよ……」
がさがさっと物音。
「あ、20分経っちゃった。起こさなきゃ……いや、待てよ零、前向きに考えろ。これは世間でいうところの据え膳……つまり俺に求められているのはおはようのキス……!」
「違う。独り言うるさいぞ神崎」
あれ、俺はなぜ神崎の手なんか握ってるんだ?
まあいいか。よく寝た。
「ちょっと固いがいい枕だったぞ。ありがとう」
枕にしていた神崎の太ももを軽く撫でて礼を言うと、神崎は顔を赤くした。
「ま、またのご利用をお待ち……しております……」
「なんで顔赤くしてるんだよ」
「槙野さんの寝顔、綺麗でした……」
「ひとの寝顔見るなよ、恥ずかしいから」
「じ、次回はキスで起こせるように頑張りますからっ」
「そうか。次回はない」
荷物をまとめてシートを畳むと、必要なくなった物をたまひよ号にしまった。
ふむ。最初こそ子供のおもちゃみたいなカラーリングだと思ったが、見慣れてくるとそう悪くもない。
何より、駐車場で見つけやすいしな。
……神崎に毒されてるかな。
「牧場行きましょー、槙野さん。俺、馬見たいんです」
神崎が俺の背中を軽く押して急かす。
ともだちにシェアしよう!