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5- 公園デビュー!(13)
「綺麗ですねぇ……」
帰り道、ため息のように神崎がこぼす。
カーブした道の向こうには、赤ともオレンジともつかない色彩が空に広がっていた。
黄色く円くにじんだ太陽は、ゆらゆらと揺れながら木々の合間に沈んでいく。
「綺麗だな」
それ以外の言葉が見つからなくて、俺も神崎と同じ言葉を口にした。
カーブの外側には、車が止められそうなちょっとしたスペースがあり、神崎は吸い込まれるようにそこに車を止めた。
二人して無言で車を降り、端に寄って空を眺める。
ゆっくりと夕陽は沈み、木々の合間に姿を埋めた。
「うーん、もっと見てたいのに……」
神崎が呟いている。
俺は茜空を横切る鳥の影を目で追っていて、ふとガードレールの切れ目を見つけた。
近づいてみると、下へ降りる細い階段が続いていた。
俺は神崎の元に戻り、何も言わずにその腕を引き、その階段を下りる。
下りた先は視界が開けた小さな展望台のようになっていた。
太陽がゆらゆらと空をたゆたいながら、遠い山の向こうに姿を隠そうとしている。
まるで絵画のような光景で、現実味が薄れていくのを感じた。
俺は神崎と二人で見ているという実感を得たくて、神崎の傍によると軽くもたれかかった。
一瞬驚いたように神崎がこちらを向いたが、すぐにまた空に視線を戻した。
さりげなく神崎が腕を伸ばして俺の腰に手を回し、抱き寄せる。
こらこら。
腰に回された手を取って外す……が、なんとなくその温もりを手放すのが寂しくて、神崎の手を掴んだまま、離せなかった。
しばらくそのままじっと景色を眺めていると、神崎の手がもぞもぞと動いた。
俺が掴んだ手をそっと解くと、改めて手を繋いできた。
指を絡めて、恋人のように。
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