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6- 縄張り争い(4)SIDE:神崎
一次会が終わって、がやがやと店の前にたむろする俺たち。
「二次会行く人―」
ばらばらと手が上がる。帰る人はさっさと駅の方角に向かっている。
「零ちゃん二次会行こうよぉ」
槙野さんが見つからなくてきょろきょろしている俺の腕をつかみ、小牧ちゃんがねだる。
「うん、それはいいんだけど……槙野さんと西嶋さんは?」
「なに?気になるの?二人ならさっさと駅の方に行っちゃったよ」
小牧ちゃんがどういう意味か、ちょっとにやっとして教えてくれた。
駅かぁ……帰ったんだったら、ま、いいか。
二人でってのに少し引っかかりながらも、俺は二次会に行くメンバーに混ざった。
◇ ◇ ◇
「んもぅ、だから零ちゃんは分かってないんだってばぁ!」
「はいはい」
「のり弁にはぁ、唐揚げでもコロッケでもなくてぇ、マヨネーズが足りないのぉ!」
「運転手さんすみません。うるさくて」
タクシーの運転手さんから生ぬるい同情の笑みをもらいながら、俺は酔っぱらった小牧ちゃんの相手をしていた。
あの後三次会まで行った小牧ちゃんは完全に飲みすぎて、さっきからずっとのり弁とマヨネーズについて熱弁してる。
「小牧ちゃん、どのマンション?」
「んー?レンガのやつだよぉ。んでね、マヨネーズはカロリーなんか気にしちゃダメなの!」
「そうなの?……あ、すみません、そこのマンションの前までお願いします」
小牧ちゃんのマンションの前で下ろしてもらい、タクシー代を払う。
うぅ、地味に痛い。
三次会まで行ったのが響いちゃったなぁ……。
この間小牧ちゃんは何をしていたのかというと、植え込みの縁に腰を掛け、ツツジの葉っぱを一枚一枚むしっては並べていた。
「ちょちょ、ちょっと小牧ちゃん何やってるの。ツツジが可哀想でしょ?」
「んー」
しばらく手を止めて考えていた小牧ちゃんは、やがて一つ頷くと、俺に向かって両手を伸ばした。
立てない、もしくは立ちたくないらしい。
俺は一つため息をついた。
「あのねぇ小牧ちゃん。俺だからいいけど、他の男にそういうのやっちゃダメだよ?」
俺がゲイだって分かってやってんのかな。それともたまたま?
半ば抱えるように小牧ちゃんを支えて、言われるままに小牧ちゃんの部屋まで連れていく。
腕にむにむにバストが当たってる。結構おっきい。
これは相当酔ってるなぁ……。
部屋の鍵を開けて、何とか小牧ちゃんちの玄関までたどり着いた。
よいしょと小牧ちゃんを下ろす。
「小牧ちゃん大丈夫?水飲む?」
ゆっくりと首を振って、「寝る……」と呟いたので、ぎりぎり大丈夫そうだ。
「じゃあ俺帰るから。鍵ちゃんとかけてね?」
「はぁい」
「じゃあね。おやすみ」
「おやすみなさぁい」
ドアを閉めて念のため様子を見ていると、しばらくしてかちりと鍵が掛かる音がした。
ふう。これでいいかな。
俺はマンションを出ると、駅に向かって歩きだした。
しまったな、タクシーに待っててもらえばよかった。
それでも、しばらく歩いていると駅近くに出たようで、辺りが賑やかになってきた。
飲食店の多い大通りを歩いていて、俺は足を止めて目を見張った。
道の反対側にある一軒のバーから、よく見知った人が出てきたから。
続いてもう一人。
西嶋と……槙野さんだ……。
なんだよ、帰ったんじゃなかったんだ。飲んでたんだ。
二人きりで。
槙野さんたちは、そのまま道の端で話していたかと思うと、西嶋がすっと建物の影に槙野さんを引き込んだ。
それで、二人して話して。
ちょっと笑って。
少し背の高い西嶋の顔を引き寄せるように、槙野さんが片腕を首に回して。
そのあと。
槙野さんが西嶋に、キスをした。
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