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6- 縄張り争い(5)SIDE:神崎

そこからどうやって自宅に帰ったかは覚えてない。 気がついたらお風呂上がりで自分のベッドの上にいて、お気に入りのぬいぐるみを抱えてぼーっとしていた。 前に槙野さんにあげたネコのぬいぐるみの、でっかいやつ。 昔、誕生日に幼馴染みが買ってくれたやつ。 ふわふわした毛並みに額を当てて、ぐるぐる考えてる。 なんで?って。 二人きりで飲んでたことはこの際どうでもいい。 なんで槙野さんは西嶋にキスをしたの? キスをするような仲なの? それはつまり、槙野さんと西嶋は恋人同士なの? それって……ぅ、やばい目の前が滲んできた。 それって、俺、ほんとにただのペットで終わっちゃうってことじゃん。 俺はこんなに槙野さんのこと大好きなのに、報われることはないってことじゃん。 ねえ、槙野さん。ただの片思いよりタチ悪いよ。 これだけ期待させて、甘やかしておいて、ポイなんてこと、ないよね? 俺は、槙野さんのお気に入りくらいにはなれたって思ってたんだけど。 多少の好意はあると思ってたんだけど。 わかんないよ。 槙野さんの気持ちがわかんないよ。 ……もぅ、だめだ。 考えててもしょうがない。 明日は土曜日だから、槙野さんに会いに行こう。 連絡するのすら怖いけど、はっきりさせなきゃ。 ◇ ◇ ◇ 眠れない夜を過ごして、ようやく外が薄ぼんやりと明るくなってきた。 目の奥がずきずきする。鏡を見たら、顔色は悪いし隈ができてた。 こんな顔じゃだめだ。とても槙野さんには見せらんない。 まだ時間はある。少しでも寝なきゃ。 一口水を飲んでベッドに横たわり、頭を空っぽにしてまぶたを下ろした。 次に意識が浮上したのは、昼前だった。 ……嫌な夢を見た。今一番恐れていること。 あ、他人に夢の話をしたらほんとになっちゃうんだっけ? じゃあ言わない。 顔を洗ってもう一度鏡を見たら、うっすら隈が残ってるけどぎりぎり見れる顔になってた。 うん、これなら槙野さんに会える、かな。 いつも通り、いつも通りと自分に言い聞かせながら、槙野さんに電話をする。 今から家に行ってもいいか聞いたら、構わないって言われた。

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