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6- 縄張り争い(7)SIDE:神崎

数秒の間、沈黙が俺らの間を支配した。 口を開いたのは槙野さんだった。 「知り合ってから今までに、何度か告白された。でもその度に断ってきた。『友人としてなら付き合う。でもそれ以上はできない』ってな」 紅茶を一口飲んで、槙野さんは続ける。 「同じ会社に入社した時は驚いたが……友人としての関係は変わってない」 じゃあ昨日のキスは?っていう疑問が俺の顔に出てたらしい。 槙野さんは気まずそうに笑った。 「そう急かすな。……前に俺は酒が飲めないって言ったことがあったよな。本当は飲めないんじゃなくて飲まないんだ」 どういうこと?俺は首をかしげた。 「酒は飲める。むしろ好きな方だ。……だが、酒癖が悪くて、……その……男の俺が使うにはおかしな表現だが……貞操観念がゆるくなるんだ」 恥ずかしそうに下唇を噛んで、目をそらす槙野さん。 は、はい?! つまり酔うと見た目だけじゃなくて中身もエロくなるってこと? そんな槙野さん、想像できないんですけど?! 「だから、普段の飲み会では絶対に酒は飲まないことにしてるんだが……昨日は久しぶりに西嶋と二人きりだったし、少しならいいかと思って飲み始めたのが間違いだった。結局少しじゃすまなかった」 膝の上の鈴ちゃんが、かまえとばかりに俺の手に頭をすりつける。 俺は半分上の空で鈴ちゃんの顎を指先でくすぐった。 「いい気分になった頃に、西嶋が賭けを持ちかけてきたんだ。俺が勝ったら支払いは西嶋がもつ、西嶋が勝ったらキスを一つ。で、西嶋が勝った」 「な、なんてもの賭けてるんですか!」 思わず俺は声をあげた。 「いや、昔から酔ったときはよく賭けてたから……特に抵抗はなくて」 槙野さんが小声で言い訳する。 「よく?!やめてください!」 つまり俺が見たキスシーンは、賭けの代償を支払ってるところだったわけだ。 それにしても、西嶋はよくキスできるな……その先は断られてるのに。 フラれても何回も告白してるってのもびっくりだ。 槙野さんへの執着ぶりはいつぞやの威嚇で分かってたけど、ここまでとは思ってなかった。 ちょっと西嶋を見る目が変わったかも。敵なのは変わらないけど。

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