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7- アクシデント(5)
その日、いつも通り出社すると、事務室内はいつも通りじゃなかった。
嫌な感じにざわついていて、空気が重い。
どうにも不安になって、そこにいた早野に聞いた。
「何かあったのか?」
「……神崎が、事故に。やばいかもって」
「は!?」
ジコ?ヤバイって?
言葉の意味は分かるけれど理解できない。
思わず早野に詰め寄る。
「な、何?どういうことだ?!」
「いや、俺も聞いた話なんで詳しくないんですけど、思いっきり車にドン、とやられたみたいで。結構、その……重体らしくて」
早野も言いづらそうに顔をしかめた。
「病院は?」
「I総合病院らしいですよ」
「部屋は?」
「さあ……あ、でも小牧が電話受けてたんで知ってるかも」
小牧に聞いてみる。
「神崎の入院先知ってるか?」
顔を上げた小牧は、目を赤くしていた。
そういえば、神崎と仲が良かったっけな。
「……聞いてます。メモ、書きますね」
受け取ったメモを手に、部長から休みの許可を得ると俺はさっさと会社を出て病院に向かった。
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