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7- アクシデント(7)

翌日も、定時になると同時に会社を出て病院に向かった。 まだ神崎は目を開けない。 三日目。相変わらず瞼は下りたまま、ぴくりともしない。 俺にできるのは、傍に居ること。そっと手に触れることだけ。 こんなに自分が無力だと痛感したことはなかった。 四日目、いつも通りまっすぐ病院へ向かった。 今日こそは神崎は起きているだろうか。 病室に入ると、神崎は目を閉じていた。 ……まだ眠っているか。 すぅすぅと寝息をたてて寝ている。 しばらく寝顔を見ていると、神崎がうっすらと目を開けた。 起きた……。 「?槙野、さん?」 不思議そうに俺を見ている。 やがて何度か瞬きをすると、嬉しそうに笑った。 こっちは泣きそうだってのに。人の気も知らないで、この野郎……。 「なんだよ」 「え、だって槙野さんがいたから。嬉しくて」 「昨日は三鷹って人も来てたぞ」 「まじで!あーまた、何やってんですかって、ゆっきーに怒られるー」 神崎は大げさにため息をついた。 幼馴染みだと言った男の姿を思い出す。 心労に曇ってはいたが綺麗に整って目立つ風貌で、背が高くスーツがよく似合う男だった。 「幼馴染みなのか?」 「そう。俺が七歳の時からつるんでる」 「心配してるみたいだったぞ」 「そっか。じゃあそんなに怒んないかな……ぅ」 急に、神崎が表情をこわばらせた。 「神崎、どうした?」 「痛い……い、痛い、いたっ」 みるみるうちに額に脂汗が浮いてくる。 俺はとっさに手を伸ばしてナースコールを押した。 すぐに看護師がやって来た。 「どうしましたー?……あらあら痛み止め切れちゃったのね。すぐ先生呼んでくるから少し我慢してくださいねー」 担当医らしき白衣の男性と先ほどの看護師が再度駆けつけてきたので、俺は邪魔にならないよう少し離れた。 神崎は目じりに涙を浮かべて痛みをこらえている。 処置はすぐに終わり、彼らは撤収していった。 「痛み止め効くまでほんの少しかかりますからねー。ごめんなさいね。もう少し頑張ってくださいね」 看護師が言い残していった通り、神崎はまだ痛みに悶絶している。 「……っはぁ……!……うぅっ」 「だ、大丈夫か?」 どこからどう見ても大丈夫ではないが、俺にはそんな言葉しかかけられなかった。 「ま、きのさ……、手、握って……」 切れ切れに神崎が言葉を押し出す。 言われるままに、包帯に包まれ、痛みにひきつった手を両手で軽く握ってやる。 気休めにしかなれない自分が歯がゆくてしかたない。 苦しそうだった神崎の呼吸が次第に緩やかになり、それにつれて目がとろんとしてきた。 握っていた手を軽く撫でてやると、少し神崎が微笑んだ。 「ごめ……なさ……眠い……」 そのまま目を閉じると、再び眠ってしまった。

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