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8-わんこ卒業(3)
神崎、俺、の順で風呂に入り、俺がドライヤーで髪を乾かしてから廊下に出ると、ドア前で待ち構えていた神崎に襲われた。
壁を背に両腕で囲われて、逃げ場を失う。
「おい、か、んざきっ、待てっ」
「やだ」
嵐のようなキスの合間に抗議するが、神崎に一蹴された。
ふにっとした柔らかい唇が甘く口づけたかと思うと、するりと舌が口内に入ってきて、俺の舌を舐め溶かそうとするように柔らかく絡み付いてくる。
裾から入り込んだ指が、背筋をつつっと煽った。
ぞくぞくするような感覚が遅れて背中を走り、思わず揺れる吐息が漏れる。
「ふふ。槙野さんココ弱いんだ?」
「俺で、遊ぶなっ」
神崎の腕を掴んでいた手が震えて滑り落ちかけ、シャツを掴んでこらえた。
「するなら、こんなところじゃなくて……っ!」
掠れ声を押し出す。もはや懇願だ。
「だって待ちきれなかったんだもん」
名残惜しそうに一際甘くキスをしてから、神崎は寝室のドアを開けた。
俺の手をとり、気取った仕草で甲に口づけを落としてベッドにエスコートする。
「なにキザな真似してるんだよ」
「だって、嬉しくて、楽しくて、夢みたいで」
言葉通りに神崎はにこにこと無邪気な笑顔を浮かべ、再び軽くキスをしながら俺をゆっくりとベッドに押し倒した。
片手は俺と指を絡めて、反対の手でパジャマのボタンを外していく。
男とするのはもちろん初めてだ。
露にされていく自分の肌を見ているのは少し気恥ずかしくて、俺は手を伸ばして神崎の頬を撫で、キスの続きをねだった。
「なあ、もっと、キスを寄越せよ」
神崎は俯いて俺の唇を少し強く噛んだ。
じんじんと疼く唇が、欲を煽る。
俺は神崎の後頭部に手を回して頭を引き寄せ、深く、深く、酔いそうなほどのキスを交わした。
ちゅ、くちゅ、と唾液の交ざる音がシーツの上に密かに落ちる。
飲み込みきれなかった唾液が口の端から零れかけ、陶然とした顔の神崎が舌で掬いとった。
ボタンがすべて外れて、上半身が露になる。
「綺麗……」
上半身を起こし、俺を見下ろす姿勢になった神崎がうっとりと呟いた。
ふと頭を下げたかと思うと、鎖骨のあたりにぴりっとした痛みが走った。
あ、キスマークつけやがった。
神崎が再び顔をあげて俺を見る。頬が赤く染まり目も潤んでいる。
「どうしよ、槙野さん」
「なんだよ」
「すんごい興奮する。写真撮っていい?」
「だめに決まってるだろ馬鹿犬」
唐突にとんでもないことを言い出したな。
「だってこんなに綺麗な槙野さんに、俺が付けたキスマークが残ってるとか、エロすぎて鼻血出そう」
「これで我慢しろ」
俺は神崎のシャツを掴んで屈ませると、ちょうど覗いた鎖骨に、同じように赤いしるしを残した。
「ほら、お揃いだ」
途端にツーショットをねだり始めた神崎を、俺は仕方なくキスで黙らせた。
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