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8-わんこ卒業(11)
何時間経っただろうか。
眠気の帳 の外で、二人が囁いているのが聞こえる。
「んなな、あう」
「ほんとごめん、鈴ちゃん許して」
「んなんな」
「うん、俺がやり過ぎちゃったから、ご主人様疲れちゃったの。あ、駄目だよ起こしちゃ」
「ぐるる」
「ごめんってばぁ……」
鈴をあやしているらしい神崎の声。
俺はふっと頬を緩めて、また眠りに落ちていった。
◇ ◇ ◇
次に目が覚めた時には、だいぶ日が高くなっていた。
時計を見て目を見張る。もう二時過ぎだ。
起きなければと動こうとして、腰に痛みが走り思わず呻いた。
「ん……あ、おはようございます!」
聞き慣れた声がして振り向くと、ベッドの横の床に神崎が座っていた。
昨晩とはうって変わって、まんまるの眼のいつも通りのにこにこ顔だ。
「なんで、そんなとこにいるんだよ」
喉が枯れている。酷い声だ。
「槙野さんが起きるの待ってたら、ここで寝ちゃったみたい」
神崎がシーツに突っ伏してみせる。
「そうか。で、声は酷いし腰も痛いんだが、どういうことだ」
神崎は決まり悪そうな顔で笑った。
「ごめんなさい。昨日やり過ぎました」
「昨日……」
神崎の言葉に、昨晩の自分の恥態が脳裏によみがえり、思わず俺は顔をおおった。
「あ、ああ、いや、俺が調子に乗りすぎたんで、槙野さんは悪くないです」
神崎が慌ててフォローする。
「いや、俺もだいぶやらかしたな……」
神崎の頭を撫でながら、ため息をついた。
「パジャマ着せてくれたのか。あ、体も拭いてくれたのか?すまない。ありがとう」
「いや、はは、その、結構酷かったんで」
「だろうな」
「ぁあお」
ドアの外から鈴の声がする。
「あ、鈴ちゃんが、槙野さんが起きないからご機嫌斜めなんです」
「入れてやってくれ」
「はい」
神崎が立って行ってドアを開けると、鈴が飛び込んできた。
「ぐるるぁお」
ベッドに飛び乗ると、片足を俺の肩に乗せて俺を睨んだ。
さて、困った。どう言い訳しようか。
丸眼のペットは素直に戻ったが、こっちの金眼はちょっとやそっとじゃ許してくれなそうだ……。
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