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9-約束(1)SIDE:神崎
いつもの休日。
「槙野さーん、膝枕してっ」
夕食後、ソファで隣に座っている槙野さんに甘えかかって、その膝の上に頭を乗せようとした瞬間。
「ぎゃっ」
同じく槙野さんの膝に飛び乗ろうとした鈴ちゃんと頭がこっつんこした。
「あたた。ごめん鈴ちゃん。大丈夫?」
言いながらそのまま膝枕に移行しようとするけど、槙野さんの左膝から鈴ちゃんがどいてくれない。
「ぐるるぅうなぅん」
「駄目だよ!俺が先なんだからね!」
「ぎゃーぉ」
「お、脅したって無駄だよ!」
鈴ちゃんとの抗争が勃発した。
負けられない戦いってやつ。
形勢は……やや不利。だって鈴ちゃん爪出してるんだもん。
「ねえ、槙野さん!俺の方が先だったよね?鈴ちゃんに言ってやってよ!」
こうなったら槙野さんを味方につけるしかない。
呆れ顔で本を読んでいる槙野さんに訴えてみる。
「やめろ、俺を巻き込むな。どっちが先でもいいんじゃないか」
ひどい!興味なし?
俺が憤慨して、つい槙野さんの膝から腕を下した瞬間、鈴ちゃんが素知らぬ顔で槙野さんの膝の上を占拠して丸くなった。
「ずるい!鈴ちゃんずるい!ねえ今の見た!?槙野さん!」
「鈴、爪出しっぱなしだ。痛い」
槙野さんは鈴ちゃんの足先を撫でて爪をしまうよう促している。
「そうじゃなくて!俺も槙野さんに膝枕してもらいたいの!」
「そういうのは鈴と話し合え」
「交渉決裂したもん」
「じゃあ諦めろ」
「やーだーぁ」
もはや人間としての尊厳より、槙野さんの膝枕の方が重要だ。
「じゃあ十分で交代だよ!聞いてる?鈴ちゃん」
「ぐるる」
「……あまり人の膝の上で騒がしくするなよ」
仕方ないなとため息をついた槙野さんは、俺の肩を掴むと引き寄せて、キスをした。
戸惑ってる俺の唇を開かせて、舌を絡めるキスをくれた。
「これで少しは満足してくれたか?」
最後にもう一度、唇を触れ合わせるだけのキスをして、槙野さんは俺の顔を覗き込んだ。
予想だにしてなかった甘い対応に、俺はみるみるうちに顔が赤くなっていくのを感じた。
お腹に力が入らない。
俺は小さな声をなんとか喉から絞り出した。
「こ、こういうのは、鈴ちゃんの教育上よくないと思います」
「鈴はもう大人だよ。見ないふりしてくれるさ。ほら」
鈴ちゃんは槙野さんの膝の上で大あくびをしていた。
俺は槙野さんの袖をちょいちょいと引っ張った。
「じゃ、じゃあ。もう一回ちゅーしてよ」
ふふっと柔らかく笑った槙野さんは、俺の願いを叶えてくれた。
「さ、そろそろ風呂に入れよ」
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