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9-約束(5)SIDE:神崎
土曜の朝には槙野さんちに来て、その日は泊まって日曜の昼過ぎに家に帰るのが、いつからか俺の基本パターンになっている。
今日も朝から来て、ソファでのんびり二人で並んで本を読んでいた。
たまに槙野さんの膝に頭を乗せてみたりして、ごろごろしているんだけど。
なんだか槙野さんと鈴ちゃんの様子が変だ。
槙野さんは何かを窺うように俺の顔をちらちら見るし、鈴ちゃんは鈴ちゃんで、何かをねだるように槙野さんに纏わりついてる。
「そろそろお昼ご飯作りますね。今日はミートソーススパゲティの用意してきましたよ」
「あ、ああ。そうだな、頼む」
はっとしたように槙野さんが顔をあげてそう言った。
俺はキッチンでソース作りに取りかかる。
一昨日トマトが安かったからいっぱい買っちゃって、その残りを家から持ってきた。
トマトを適当に刻んでいると、鈴ちゃんが俺の足元に寄ってきた。
「んなぁん」
甘えるような声で鳴いて、俺のパンツに前足をかけて立ち上がる。
「駄目だよ鈴ちゃん。包丁使ってて危ないから、今は遊べないの」
俺が嗜めると、槙野さんも鈴ちゃんを呼んだ。
「鈴、こっちに来い」
槙野さんの声に渋々俺から鈴ちゃんが離れる。
槙野さんはそんな鈴ちゃんを抱き上げると、リビングを出ていった。
寝室にでも行ったのかな?
どこかのドアの開閉音だけが聞こえた。
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