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9-約束(8)SIDE:神崎
夕飯を食べ終わり、お風呂にも入ってのんびりして、寝る時間になった。
どうしよう。どきどきする。
毎週泊まってたけど、今日は今までと違う。
なんたって、記念すべき同棲初日の夜だ。
これは気合いをいれないと。よし。やるぞ零。
意気込んで寝室に入ると、既に槙野さんがベッドで本を読みながらうとうとしてた。
「ん、寝るか?」
槙野さんが俺を見てふわりと眠たげに微笑む。
俺はその隣に滑り込んだ。
「何言ってんの、まだ寝ません」
寝る前にすることがあるでしょう!することが!
「んー?寝ないのか?……俺はもう眠いぞ」
とろんとした目で俺の頬にキスをして、槙野さんは毛布にくるまった。
薄い目蓋が槙野さんの茶色の瞳を隠して、夢の世界に連れていこうとしてる。
「やだ。寝ない。するの」
「うん……」
槙野さんはもう半分寝てる。
俺がその髪を撫でて額にキスをすると、槙野さんは眠い顔のままちょっと笑った。
「神崎、いい子だから。『待て』だぞ。『待て』……な?……」
あれ?!俺って槙野さんの中ではまだわんこ設定なの?!
恋人じゃないの?!
同棲じゃなくて室内飼いな感じ?!
ショックを受けている間にも、槙野さんの目蓋はどんどん下がってきて、完全に閉じてしまった。
「槙野さーん、俺、したいんですけど」
訴えてみるものの、槙野さんはもう寝息をたててる。
えぇ???俺だけ盛 ってるの、これ?やだ恥ずかしい。
でも同棲初日だよ?当然、えっち期待するよね??
とは言え気持ちよさそうに眠っている槙野さんを起こすわけにもいかず、俺はしかたなく、槙野さんにそっと寄り添って眠ることにした。
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