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9-約束(9)SIDE:神崎
週が明けて平日。
前と変わらず俺は朝早め、槙野さんはゆっくりめで出勤した。
席が離れているのがもどかしい。
異動してきたころみたいに、できるならすぐ傍にいたいのに。
……まあ、いいか。帰る場所は同じなんだから。
家に帰ったら思いっきり槙野さんに甘えるんだ。
そんな風に数日を過ごしていたら、小牧ちゃんに声をかけられた。
「れーいちゃん」
「なあに?」
「明日飲みに行かない?」
飲み会かー。ほんとはまっすぐ槙野さんの家に帰りたいけど。
……たまには仕方ないか。
「いいよ。誰が来るの?」
小牧ちゃんは瞳を斜め上に向けて考えてから答えた。
「早野さんとー、高橋くん」
それなら気心も知れてるし行きやすいな。
「詳しいことは後で連絡するから、ね。よろしくー」
小牧ちゃんは小さく手を振って去っていった。
家に帰って夕飯を作っていると、槙野さんが帰ってきた。
早く家を出る分、俺の方が早く帰ってこれる。
ま、忙しくなければ、の話だけど。
「ただいま」
「ぁ、ぅ、……、おかえりなさい」
まだちょっと、照れる。
「何作ってるんだ?」
「えっと、ハンバーグ」
「うまそ。風呂入ってくるな」
槙野さんはちゅっと俺の頬に口づけて、お風呂場に行った。
……。
いやいやいやいや、やばいわよこれ。
ちょっと仲良く会話しただけなのに、心臓が破裂しそうなくらいどきどきするのよぉ!
久々にオネエが顔を出すくらいに、槙野さんがかっこよすぎる!!
スパダリか!!いや、槙野さんはやっぱり『ご主人様』だな。
夜は俺が上だけどね!!
はあぁ、別に今日が初めてじゃないのに、このときめきっぷり。
いつか慣れるのかな……。
ハンバーグがふっくら焼けて、部屋着に着替えた槙野さんと夕飯を食べる。
「あ、そうだ。俺明日飲みに行ってくるね」
ふと昼間の小牧ちゃんとの会話を思い出してそう言った。
「ちょうどいいな。俺も同期と食べてくる」
良かった。じゃあ夕飯の心配は要らないな。
ん?
「同期って、西嶋さんもいるの?」
槙野さんは、俺が少しほっぺたを膨らませたのを見て笑った。
「いるけど、心配するな。酒は飲まないから」
「そおですかぁ?」
それでも、西嶋と一緒に行くってだけで不安になる。
……いや、槙野さんを信じよう。うん。
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